社号 | 尾上神社 |
読み | おのえ |
通称 | |
旧呼称 | |
鎮座地 | 兵庫県加古川市尾上町長田 |
旧国郡 | 播磨国加古郡長田村 |
御祭神 | 住吉大明神 |
社格 | |
例祭 | 9月30日 |
尾上神社の概要
兵庫県加古川市尾上町長田に鎮座する神社です。
社伝によれば、神功皇后の三韓征伐の帰途、この地に上陸したものの霖雨が続いて船を進めることができなかったので、「鏡の池」で斎戒沐浴して住吉大明神を祀って晴れを祈願したのが当社と伝えられています。
神功皇后が当地を訪れたとする記録は無く、瀬戸内海沿岸で多く見られる神功皇后に付会した伝承の一例でしょう。
一方で当地の地名「長田」は『播磨国風土記』に見え、景行天皇が印南別嬢に妻訪いした際、その道の辺りに長田があり、天皇が「長田なるかも」と言ったので長田里という、とする地名語源説話を載せています。
地名そのままの記事ながら、ここから当地は古くから開拓され田圃が広がっていたことが窺えます。
また『三代実録』元慶元年(877年)四月七日条に見える「姥女神」を当社に比定する説があります。
当社境内には多くの松が生えており、中でも相生の松は「尾上の松」として有名です。
謡曲「高砂」に夫婦和合の象徴として謡われる住吉大社の松と対になる松は初代の「尾上の松」であったとも言われています。ただし一般的には「高砂神社」(高砂市高砂町東宮町)にある相生の松がそうであるとされています。
尾上の松は三代目が天然記念物に指定されていたものの昭和二十四年(1944年)に枯死、六代目も平成二十一年(2009年)に枯死しました。
現在は七代目が残っており、八代目と九代目も新たに植樹されています。
また当社には「尾上の鐘」と呼ばれる国指定重要文化財の銅鐘が伝わっています。
伝承では神功皇后が三韓征伐の際に持ち帰ったとも伝えられているものの、実際には1011年頃に高麗で鋳造されたものが伝わったものと考えられています。
さらにこの銅鐘には次のような伝承もあります。
この銅鐘は元々は龍宮にあったという。
ある日海賊がこの銅鐘を盗み出し、足摺岬まで来たところ急な大嵐となり沈没しそうになった。龍宮の神が鐘を返せと怒っているのではないかとして慌てて鐘を海へ投げ込んだところ、海は静かになった。
その事件の後、その近海では夜になると海中が光るようになり、漁が出来ないと困っていた漁師がその光るものを引き揚げたところ件の鐘であった。今もこの時にできたひび割れが残っている。
この鐘は一度高野山へ奉納されたものの、鐘を鳴らす度に「おのえへいのー、おのえへいのー(=尾上へ帰ろう)」と聞こえてくるため尾上神社へ戻されたという。
境内の様子
当社は長田地区の集落内に鎮座しています。
境内は塀で囲われ、東側にある入口には注連柱と随身門が東向きに建っています。
随身門の形式は銅板葺の平入入母屋造の八脚門。左右の部屋に随身が安置されており、互いを向き合う対面型となっています。
随身門をくぐった様子。境内は砂利が敷き詰められ社殿まで石畳が伸びています。
境内は低木が多いながらもやはり松の木が目立ちます。
石畳の途中の右側(北側)に手水舎が建っています。
石畳の奥に社殿が東向きに並んでいます。
拝殿は本瓦葺の平入入母屋造に軒唐破風と千鳥破風の付いたもの。
拝殿前に配置されている狛犬。
拝殿の左側(南側)に「片枝の松」と呼ばれる松が生えており、都を慕って東へ枝が張っているとも言われています。
前代のものは昭和二十四年(1944年)に枯死したといい、現在のものは三代目です。
拝殿の後方には幣殿、本殿と並んでいます。幣殿は本瓦葺の妻入入母屋造に前後とも千鳥破風の付いた複雑な形式。
案内板
都恋しき片枝の松
幣殿後方に銅板葺の三間社流造の本殿が建っています。
本社本殿の左右にそれぞれ境内社が東向きに鎮座。社名・祭神はいずれも不明。
社殿はいずれも銅板葺の一間社流造。
境内の北東隅、随身門をくぐってすぐ右側(北側)のところに「大村神社」が鎮座。
「大村神社」(御祭神「大己貴大神」)と「歳神社」(御祭神「大年大神」)を合祀したもの。いずれもかつて長田村内に鎮座していたもので、明治四十二年(1909年)に当地へ遷座しました。
鳥居が建ち、その奥に銅板葺の平入切妻造の社殿(覆屋?)が建っています。
案内板
大村神社
大村神社の手前右側(東側)に「一本稲荷大神」が南西向きに鎮座。
鳥居が建ち、奥に銅板葺の一間社流造の社殿が建っています。周囲に複数の岩石が配置されているのが印象的。
手水舎の後方の玉垣内に七代目の「尾上の松」が聳えています。現在の当社において最も立派な樹勢の松となっています。
境内の南東にある玉垣内には八代目と九代目の「尾上の松」が植樹されています。
平成二十三年(2011年)に植えられたものでまだまだ小ぶりです。
境内の西側には国指定重要文化財の銅鐘「尾上の鐘」の収蔵庫があり、見学することができます。
1011年頃に高麗で鋳造されたもので、中央に如来像が、左右に天女が浮かぶ非常に美しい図様の銅鐘です。
この銅鐘にまつわる伝承については上記概要をご参照ください。
案内板
国指定重要文化財 銅鐘(尾上の鐘)1口
由緒
案内板
尾上神社・尾上の松
地図