屋就神命神社 （奈良県橿原市大垣町）

屋就神命神社の概要

奈良県橿原市大垣町に鎮座する式内社です。

当社の創建・由緒は不詳ですが、古くから同じ多地区に鎮座する「多坐彌志理都比古神社」と非常に関係が深く、同社の境外摂社となっています。『延喜式』神名帳の註に「大社皇子神」とあり、これは多社（＝多坐彌志理都比古神社）の御子神を祀るものと考えられます。

久安五年（1149年）に「多坐彌志理都比古神社」の禰宜が国司に提出した『多神宮注進状』によれば、当社は「日月神社」と表記され、「皇子神命神社」や「姫皇子命神社」、「小杜神社」と共に同社の若宮となっていることが記されています。

続いて同書によれば、当社の神は「火瓊神尊」であり、同書の裏書にはこの神は「豊御気津命」で「天明豊玉之命」の号となし、玉祖郷に座す豊玉社と「同名異体」（※「同体異名」の誤りか？）であると記しています。そしてこれは『延喜式』神名帳の河内国高安郡の「玉祖神社」のこととしています。

式内社「玉祖神社」は現在は大阪府八尾市神立に鎮座する神社で、玉の製作に従事した玉造部が奉斎した神社と考えられ、「櫛明玉命」を御祭神としています。

創建当初の神でなかったとしても玉の製作に関する神を祀ったことに疑いなく、このような神格の神が何故「多坐彌志理都比古神社」の御子神として当社に祀られたのかははっきりしません。

『多神宮注進状』によれば「多坐彌志理都比古神社」の祭神は「天忍穂耳尊」と「天疎向津媛命」であるといい、玉造部の神とは接点がありません。

記紀にはアメノオシホミミの子、ニニギの天孫降臨に随伴した五柱の神の一柱に「玉祖命」（『古事記』）あるいは「玉屋命」「櫛明玉神」（『日本書紀』）が記されているため、これに関するものかもしれません。

しかしその一方で同書には当社の神は天照大日孁神の皇子神と言うべしともあり、当社の御祭神についてイマイチはっきりしません。

また当社が何故「日月神社」と称していたかもよくわかりません。

一方、室町時代の『和州五郡神社神名帳大略注解』（通称『五郡神社記』）によれば、当社は「小杜神社」と相殿となって祀られており「別宮」と称していたことが記されています。

「多坐彌志理都比古神社」の南二町の地にあったとあり、これはほぼ現在の「小杜神社」の地ですが、現在の当社は全く別の地（西方400mほど）に鎮座しています。

両社は『延喜式』神名帳に「多坐彌志理都比古神社」とは別に記載されていること、また『多神宮注進状』にも同社に合祀されていることは見えないことから、少なくとも別々に祀られていたのが本来の形態だったものと思われます。

当社は一旦「小杜神社」へ合祀されて相殿となった後に再び旧地に戻されたのかもしれません。

いずれにしてもかなり古くから（或いは創建当初から？）「多坐彌志理都比古神社」と関わりの深い神社であるのは間違いありません。

境内の様子

当社は大垣町に鎮座するとはいえ、大垣の集落から北へ遠く離れた田圃に囲まれた地に鎮座しており、「多坐彌志理都比古神社」から西方へ400mほどのところにあります。

同社の入口から西へ進んでいくと田圃の中に小さな森があり、これが当社の境内となります。

境内は微高地となっており、南側の入口には三段ほどの広い石段となっています。

入口から正面奥へ進むと鳥居が南向きに建っています。

鳥居をくぐると当社の本殿が南向きに建っています。社殿は銅板葺の春日見世棚造。

拝殿などの施設はなく、まさに村はずれの小さな祠といった非常に簡素な神社となっています。

当社の森も木々が疎らで古い印象はありません。一時期に「小杜神社」の相殿になっていたらしいことと関係があるのかもしれません。（小杜神社の森も疎らではあるが…）

タマ姫

「皇子神命神社」もそうだけど、摂社とはいえめちゃちっちゃな神社だねー。

室町時代の文書によればその当時は「小杜神社」の相殿になってたみたいね。それ以前はもっと大きい神社だったのかもしれないわね。

トヨ姫

地図

奈良県橿原市大垣町

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