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庭田神社 (兵庫県宍粟市一宮町能倉)

社号庭田神社
読みにわた
通称
旧呼称
鎮座地兵庫県宍粟市一宮町能倉
旧国郡播磨国宍粟郡能倉村
御祭神事代主命
社格式内社、旧村社
例祭10月18日

 

庭田神社の概要

兵庫県宍粟市一宮町能倉に鎮座する式内社です。

当社は成務天皇甲申年二月十一日の創建と伝えられているものの、その他の由緒は詳らかでありません。

『播磨国風土記』に記載される「庭音(ニハト)村」は当地に比定されており、次のように記されています。

『播磨国風土記』(大意)

庭音村。元の名は庭酒(ニハキ)。

大神の御糧(みかれひ / =飯を乾燥させた保存食)が水に濡れてカビが生えたので酒を醸させ、庭酒を献上して宴を行った。故に庭酒村という。今の人は庭音村という。

これは記録に見える最初の酒造の記事であることから当社は日本酒発祥の地とも言われています。

ただし『播磨国風土記』では同じ宍粟郡の伊和村でも神が酒造したことが見えており(詳細は「伊和神社」(一宮町須行名に鎮座)の記事を参照)、また単に記録に見える初見であり、この記事を以て当社を日本酒発祥の地と言うことは不当でしょう。

一般に当社の由緒としても上記の記事を援用するものが知られているものの、江戸時代の文献で酒に関係する記録は管見では見当たらず、また『播磨国風土記』が世に知られるようになったのは江戸時代末期以降であることから、それ以降に結び付けられた可能性が高いと思われます。

とはいえかつては宵宮祭の当日早朝に家々で醸造した酒を神前に供えたといい、また境内北東側に隣接して「ぬくゐの泉」なる湧水もあり、当社が古くから酒造と関係があったことを窺わせるものとなっています。

現在は上記の記事から酒と縁の深い神社であると位置づけられており、宍粟市で江戸時代から造られていたものの昭和年間に製造終了した酒「三笑」が2018年に復活し、その蔵出し式が当社で行われています。

 

なお、中世の地誌『峯相記』は当社を「伊和神社」の「眷属の部類」としています。伊和神社と関係の深い神社、或いは境外社だったということなのでしょう。

谷底の低地に鎮座する点、境内に岩石が祀られている点等に「伊和神社」との共通点があり、成務天皇甲申年の創建とする伝承も「伊和神社」と共通で、また上述のように両地ともに『播磨国風土記』において酒造の記事があることから、古くから極めて深い関係があったことが推察されます。

当社もまた「伊和神社」と同様に伊和君なる人々が奉斎していたのかもしれません。

 

境内の様子

庭田神社

当社は能倉(ヨクラ)地区の谷底平野の真ん中、つまり低地部に鎮座しています。

山間の地でありながら山麓などでなく平野の低地部に社叢を形成して鎮座する点は須行名地区の「伊和神社」とよく似ています。

境内南端に入口があり、鳥居が南西向きに建っています。

 

鳥居をくぐった様子。境内は深い森に覆われています。

 

参道の右側(南東側)に手水舎が建っています。

当社はエビス神ともされる「事代主命」を祀っていることから手水鉢には蔓柏紋が刻まれています。

 

参道を進むと銅板葺の平入切妻造の随身門が建っています。

左右の部屋に安置されている随身像は互いを向き合っており対面型となっています。

 

庭田神社

庭田神社

随身門をくぐるとその奥やや左寄りに社殿が南西向きに並んでいます。

拝殿は銅板葺の平入入母屋造に軒唐破風の付いた割拝殿。

 

拝殿前に配置されている狛犬。

 

拝殿後方は平入入母屋造の幣殿が接続して一体化しており、凸型拝殿のような建物となっています。

 

幣殿後方、瑞垣に囲まれて銅板葺の一間社入母屋造に向拝の付いた本殿が建っています。

 

本社本殿の左側に境内社がL字形にまとまって鎮座しています。

境内社のうち最も手前側(南西側)に五社の相殿が南東向きに鎮座。

祀られているのは左側(南西側)から順に「水分神」「加具土神」「大歳神」「大山津見神」「火魂神」。

社殿は五間社流見世棚造と覆屋が一体化したもの。

 

五社相殿の右側(北東側)に四社の境内社が一つの覆屋に納められて南東向きに鎮座。

祀られているのは左側(南西側)から順に「荒神社」「八幡社」「?(※社名を示す札が欠落)」「出雲社」。

社殿はいずれも板葺の流見世棚造。

 

四社の右側に二社の境内社が一つの覆い屋に納められ、向きを変えて南西向きに鎮座。

これらの内、左側は「稲荷社」が、右側は「皇大神宮」です。

社殿はいずれも板葺の流見世棚造。

 

本社拝殿の右側(南東側)に隣接して玉垣で囲われた区画があり、その中には岩石があります。

これは「霊石」とされているものの詳細不明。

とはいえ境内に岩石を祀る点も「伊和神社」と共通しています。

 

本社拝殿の手前側には土俵があり、ブルーシートで覆われています。

 

土俵の奥側、社殿と相対するようにして銅板葺の平入入母屋造の舞台が建っています。

このような舞台は西播磨でよく見かけるものです。

 

境内の北東側に隣接して「ぬくゐの泉」と呼ばれる湧水があります。

当社が古くから酒と関係あるのならばこの泉の水で醸していたのでしょう。

貼紙

庭田神社のぬくゐの泉と造酒

 

タマ姫
へー、お酒の発祥の地がここなんだ!
正確には記録に見えるお酒造りの初見よ。『播磨国風土記』では「伊和神社」の地でもお酒造りの記事があるわ。
トヨ姫

 

由緒

案内板

式内 庭田神社由緒記

 

地図

兵庫県宍粟市一宮町能倉

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