社号 | 春日神社 |
読み | かすが |
通称 | |
旧呼称 | 上の宮 等 |
鎮座地 | 和歌山県海南市大野中 |
旧国郡 | 紀伊国名草郡大野中村 |
御祭神 | 天押帯日子命 |
社格 | |
例祭 | 10月11日 |
春日神社の概要
和歌山県海南市大野中に鎮座する神社です。
式内社でも国史現在社でもありませんが、紀伊国の国内神名帳である『紀伊国内神名帳』の名草郡天神に記載されている「正一位 春日大神」を当社とする説があります。
当社は「春日」を冠するものの、「春日大社」(奈良県奈良市春日野町に鎮座)を総本宮とする春日信仰に基づく神社でなく、和珥氏の後裔である「春日氏」が当地に居住し祖神を祀ったものと伝えられています。
当社の御祭神である「天押帯日子命」は和珥氏および春日氏らの祖にあたる人物で、孝昭天皇の皇子です。
当社はかつて「上の宮」と呼ばれたのに対し、当社の西方650mほどの井田地区にはかつて「粟田神社」が鎮座し、「下の宮」と呼ばれていました。
「粟田神社」では天押帯日子命の三世孫「彦國葺命」を祀っていたといい、この神は現在当社に配祀されています。
和珥氏は後に春日氏・大宅氏・粟田氏・小野氏・柿本氏・壱比韋氏など16氏族に分かれた一大氏族で、当社では春日氏が奉斎し、粟田神社では粟田氏が奉斎したものと思われます。
また当社の西北西1.3kmほどの日方地区には「伊勢部柿本神社」が鎮座しており、この神社は柿本氏が祭祀に関わっていたことが考えらます。(ただし「伊勢部柿本神社」の比定は不明な点が多い。詳細は当該記事参照)
このように当地一帯では和珥氏の後裔である諸氏がまとまって居住していたことが推測されます。
ただ、『紀伊国神名帳』では「春日大神」が天神なのに対し「伊勢部柿本神」は地祇とあり、春日氏・柿本氏がそれぞれ祖を祀ったとするならば天神と地祇に分かれるのは疑問です。さらに後者に関しては元伊勢に関連して天照大神を祀るともされ、それならば地祇であるのはますます不審と言うべきでしょう。
上記のように当社は和珥氏の後裔である春日氏が祖を祀ったとされる一方で、やはり春日信仰の影響を受けて「春日大社」の春日神と混同されることもあったようで、現在も当社には鹿の木像が安置されています。
当社は天正十三年(1585年)に元春日なる地(詳細不明)より現在の三上山(春日山)に遷座したと伝えられています。この山の木々は伐採されることなく大切にされ、現在その社叢はツブラジイの優占する照葉樹林となっており、貴重な植生として海南市指定天然記念物となっています。
境内の様子
当社は大野中地区の集落の北方、三上山(春日山)と呼ばれる小さな丘の上に鎮座しています。
南麓に入口があり、鳥居が南向きに建っています。
鳥居の手前右側(東側)には「牛神神社」が西向きに鎮座。
朱鳥居が建ち、コンクリートブロックで建てられた妻入切妻造の覆屋の中に、銅板葺の春日見世棚造の社殿が納められています。
牛はかつて主に西日本で田畑の耕作や荷物の運搬に大いに利用された重要な家畜で、この神社はその守護神として祀られたものでしょう。
鳥居をくぐった様子。長い石段が伸び、非常に鬱蒼とした社叢となっています。
この社叢「春日の森」はツブラジイの優占する照葉樹林で、貴重な植生の残る極相林であり海南市指定天然記念物となっています。
案内板
海南市指定文化財
天然記念物 春日の森
石段を上りきるとその先は平らで開けた砂利敷の空間となっており、石段の右側(南東側)に手水舎が建っています。
この空間の右奥(南東側)に社殿が北西向きに並んでいます。
拝殿は本瓦葺の平入入母屋造。割拝殿のように見えますが、通路は奥まで貫通しておらず凹型の床面となっています。
結晶片岩の積まれた基壇上に建ち、桁行九間にもなる大規模な建築です。
拝殿内部の様子。奥に銅板葺の平入切妻造の中門(祝詞殿?)が建ち、その後方に本殿が建っています。
本殿はここからしか殆ど見えないものの、銅板葺の三間社流造となっています。
伝承では元弘二年(1332年)に護良親王が熊野へ身を移した際に当社へ参籠し、神主が警護して親王を本殿へ隠したといい、そのために現在も本殿の三扉のうち一つは空位であると伝えられています。
本社拝殿の右側(南西側)に桟瓦葺の妻入入母屋造の覆屋があり、その内部には雌雄の鹿の木像が安置されています。
当社は春日信仰の神社でなく和珥氏の後裔の春日氏が奉斎したものと伝えられている一方、やはりその社名故に春日信仰との混同があったようで、これはその名残と言えるものでしょう。
鹿の木像の左側(南東側)にある木の根元に鳥居と蛇の小さな置物が置かれていました。鳥居の扁額には「高天原神社」とあります。
和歌山県神社庁HPの境内社一覧に当該神社は無いため、恐らく正式な境内社ではないのでしょう。
さらに奥(南東側)へ進むと、瑞垣の奥、本社本殿の右側(南西側)に「祇園社」が北西向きに鎮座。御祭神は「素戔嗚尊」「櫛名田比売命」。
社殿はトタン葺のやや変則的な一間社春日造。
なお本社本殿の周囲には他にも数多くの境内社が鎮座しているようです。
本社拝殿の手前左側(北東側)に「白髭大明神」が南西向きに鎮座。
朱鳥居が建ち、基壇上に春日造状の石祠(覆屋)があり、そこにどういうわけか狸の石像が納められています。
和歌山県神社庁HPの境内社一覧にもこの神社の記載が無く、詳細不明。
由緒
案内板
由緒
地図
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