社号 | 下居神社 |
読み | おりい |
通称 | |
旧呼称 | 天満宮 等 |
鎮座地 | 奈良県桜井市下 |
旧国郡 | 大和国十市郡下村 |
御祭神 | 彦八井耳命 |
社格 | 式内論社、旧村社 |
例祭 | 4月25日 |
式内社
下居神社の概要
奈良県桜井市下に鎮座する神社です。下居地区に鎮座する「神明神社」と共に式内社「下居神社」の論社となっています。
式内社「下居神社」について、久安五年(1149年)に「多坐彌志理都比古神社」の禰宜が国司に提出した『多神宮注進状』に言及があり、それによれば「下居神社」の神は「神八井耳命」で、これは河内国志貴郷の「縣主神社」と同体異名である、と記しています。
河内国志貴郷の「縣主神社」とは河内国志紀郡の式内社「志貴縣主神社」のことで、現在は大阪府藤井寺市惣社に鎮座しています。
そして「下居神社」の御祭神であるという「神八井耳命」は神武天皇の皇子で、多氏や志紀県主氏などの祖にあたります。
同書は式内社「下居神社」について「多坐彌志理都比古神社」の摂社・末社である旨は記されていませんが、同社を奉斎した多氏に関係する神社として記載したものと考えられます。
また室町時代の文書『和州五部神社神名帳大略注解』(通称『五郡神社記』)には式内社「下居神社」は意富郷意富村平森に鎮座するとあり、これは現在の田原本町多にあたり、「多坐彌志理都比古神社」の近隣ということになります。
これを受けて大正三年(1914年)に刊行の地誌『大和志料』は多地区に鎮座すべきであろうとして当社への比定に疑念を示しています。
またカムヤイミミは弟であるカムヌナカワミミ(後の綏靖天皇)に皇位を譲ったことから、「下居(オリヰ)」とは「降居」の意で皇居から地方へ退去したことを意味したのであろうとしています。
一方、江戸時代中期の地誌『大和志』は式内社「下居神社」を当社に比定しており、これは当社の鎮座する「下(シモ)」の近隣にズバリ「下居(オリヰ)」の地名があることを根拠とするものと思われます。
また正史の一つ『文徳実録』の天安元年(857年)八月十六日の条に大和国の「椋橋下居神」が従五位上の神階を授かっていることが見え、この「椋橋」とは当地に隣接する「倉橋」と考えられることから、これもまた式内社「下居神社」を当社に比定する有力な根拠となっています。
「多坐彌志理都比古神社」との関係性や『五郡神社記』との関連性から田原本町多に求めるべきとする説も説得力がある一方、当地に「下居」「倉橋」の地名があることは非常に有力な根拠と言え、当社を式内社とすることもまた大きな説得力を持っています。
現状では田原本町多にはそれらしき神社が見えないため、当社もしくは下居地区の「神明神社」が有力な論社となっています。
現在の当社の御祭神は「彦八井耳命」で、この人物は『多神宮注進状』に祭神とある「神八井耳命」とは異母兄にあたります。
これは恐らく『新撰姓氏録』の河内国皇別に見える彦八井耳命の後裔「下家連」を当社の奉斎氏族と見たことによるものと思われます。
神八井耳命を祖とする多氏とは厳密には別系統の氏族ですが、いずれも祖が神武天皇の皇子であり、名もよく似ていることから、両氏族は互いに近しい関係にあったとも考えられます。
或いはこの近しい間柄ゆえに「多坐彌志理都比古神社」に取り込まれ多氏関係の神社とされたのかもしれません。
なお江戸時代には「天満宮」と称したようで、菅原道真公を祀る天神信仰の神社だったようです。
境内の様子
当社は下地区・倉橋地区・浅古地区の境界近くにあたる丘の上に鎮座しています。
入口は下地区の集落の中ほど。道沿いの斜面に石段が伸びており、途中に一の鳥居が南西向きに建っています。
一の鳥居をくぐって斜面上の参道を進み丘の上へ登って行きます。
途中振り返ってみると寺川沿いの狭い谷底に展開する下地区の集落や田圃などを見渡すことができます。
参道途中には「金毘羅大権現」と刻まれた石碑が建っています。
さらに進んでいくと本格的に山道の様相となります。
さらに進むと広い空間へ。ここからが当社の境内となりましょう。
この空間を奥へ進むと左側(西側)に手水舎が建ち、右側(東側)に斜面上へと石段が伸びています。
この石段の上に二の鳥居が南向きに建っています。
二の鳥居の左右に配置されている狛犬。砂岩製です。
鳥居をくぐって正面奥に社殿が南向きに並んでいます。
拝殿は桟瓦葺・平入入母屋造の割拝殿。
割拝殿の通路の様子。後方に床と賽銭箱が設けられ、通り抜けることはできません。
割拝殿の後方の石垣上に本殿が建っていますが、外からは全く見ることができません。資料によれば本殿は春日造のようです。
本社拝殿の右側(東側)には四角に組まれた岩石の四隅にそれぞれ木が植えられ注連縄が掛けられていました。詳細不明。


地図
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