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伏見稲荷大社 稲荷山 (京都府京都市伏見区深草藪之内町)

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伏見稲荷大社の背後には標高233mの「稲荷山」が聳え、山上にある三つの頂である「一ノ峰」「二ノ峰」「三ノ峰」を中心に当社の神蹟が点在しています。この山は貴重な植生の残る深い森で覆われており、恐らく秦氏が進出する以前から信仰された神聖な山だったと思われます。

山上への道中には「お塚」と呼ばれる非常に数多くの石碑があり、道に連なる朱鳥居も相まって極めて異様な景観を作りだしています。こうした稲荷山の霊場を巡拝することを「お山巡り」と称し多くの人が参詣しています。また、近年は激烈に増加する外国人観光客にも軽いトレッキングとして楽しまれています。

ここでは奥社奉拝所から先の様子を記載します。奥社奉拝所から本社にかけては伏見稲荷大社の記事をご覧ください。

 

奥社奉拝所~四つ辻

奥社奉拝所の左側(北側)に多くの朱鳥居の建ち並ぶ参道があり、ここから稲荷山に登っていきます。

 

参道途中の様子。非常に多くの朱鳥居を通り抜けるのはまさに異世界へ連れていかれるかのような思いを抱かされます。

途中、「三つ辻」と呼ばれる丁字路があり、山上へ続く道を上っていきます。

 

途中、非常に多くの様々な石碑が建っています。これらは「お塚」と呼ばれるもので、個々人が自分の信仰する神を石に刻み祭祀するものです。「白高大神」「白龍大神」「金富大神」「玉姫大神」などなど記紀には登場しない個性的な神名が付けられています。これらは古いものでなく明治以降に急激に増えたもので、伏見稲荷大社は関与していないようです。

 

さらに上っていくと「熊鷹社」が鎮座しています。「新池」もしくは「谺ケ池(こだまがいけ)」と呼ばれる池に突き出すように鎮座しており、元々は稲荷山の遥拝所だったとも言われています。行方不明になった人がいた際に、池に向かって手を打ちこだまが返ってきた方角にその人がいるとの伝承があります。

 

さらに上っていきます。

 

参道を上っていくと「四つ辻」と呼ばれるところに出ます。その名の通り、道が四つの方向に分かれています。ここは西方に景色が開けており、京都盆地を見渡すことができます。

 

荒神峰

四つの道の内、どの道から行くか迷うところですが、先に盲腸線である北側の道を見ておきましょう。

 

北側の道の先、「荒神峰」というところに鎮座するのは「権太夫大神」。「田中神社」の神蹟であるとされています。本社本殿に祀られる「田中大神」のことと思われ、その旧地に比定されているのでしょう。ただしそれを証する資料は特に無いようで、その名の通り荒神が祀られていたことが考えられます。

拝所となる建物があり、その後方にある石碑を中心としてその周囲に多数の「お塚」が配されています。

 

三ノ峰

四つ辻へ戻ります。残りの二つの道は稲荷山を一周できるようになっており、どちらから上っても差し支えありませんが、この記事では山頂に近い南側の道から進んでいくことにします。

 

山頂への道を上っていくと、その途中に「三ノ峰」と呼ばれる頂があり、「白菊大神」が鎮座しています。「下社」の神蹟とされており、本社本殿の中央に祀られる「宇迦之御魂大神」の地とされているようです。周囲には数多くの「お塚」が配されています。

この三ノ峰は前期古墳であり、変形神獣鏡が出土しています。

 

間ノ峰

三ノ峰からさらに進んでいきます。

 

道を進んでいくと「間ノ峰」というところがあり、「伊勢大神」が鎮座しています。ここは「荷田社」の神蹟とされており、扁額にも「荷田社」と揮毫されています。荷田社は現在は本社から石段を上ったところにある境内社として、また東丸神社の境内にある境内社として鎮座しており、いずれも伏見稲荷大社の社家を務めた荷田氏の祖を祀っています。

また、ここの鳥居は額塚に合掌型の部材である「破風扠首束(はふさすつか)」が設けられており、「奴祢鳥居(ぬねとりい)」と呼ばれる非常に珍しい形式の鳥居です。

 

二ノ峰

間ノ峰からさらに先へ。

 

石段を上っていくと「ニノ峰」という頂があり、「青木大神」が鎮座しています。ここは「中社」の神蹟とされています。本社本殿の北座に祀られる「佐田彦大神」の地とされているようです。例によって拝所の後方に中心となる石碑があり、周囲に多数の「お塚」が配されています。

こちらもまた古墳で、墳丘長70mの前方後円墳です

 

一ノ峰

二ノ峰からさらに参道を進んでいきます。

 

この先にある「一ノ峰」は稲荷山の最高峰で、ここに「末広大神」が鎮座しています。ここは「上社」の神蹟とされています。本社本殿の南座に祀られる「大宮能売大神」の地とされているようです。稲荷山の山頂であるこの地が、当社の中心となる神である宇迦之御魂大神の地でないのはやや不思議な感じもあります。

そしてやはり拝所後方の石碑を中心にして、周囲に「お塚」が配されています。さらにこちらも古墳であり、墳丘長50mの円墳です。

これら稲荷山の古墳を築いた人々も恐らく稲荷山に対し神性を見出し信仰していたことでしょう。後に秦氏が進出して稲荷神社として祭祀され信仰が「上書き」されたものと思われます。そして見てきたように現在は夥しい数の「お塚」として信仰されるようになっています。こうした光景を目の当たりにしたとき、時代毎の信仰の在り方の変化と、信仰の対象としての山の不変性を偲ばずにいられません。

 

御劔社(長者社)

一ノ峰からぐるっと回って参道を下りていきます。

 

この途中に「御劔社」が鎮座しています。ここは「長者社」の神蹟とされています。神蹟には珍しく、拝所の後方に本殿(?)らしき建物があります。

長者社は伏見稲荷大社本社から石段を上った空間にある境内社で、社家を務めた秦氏の祖神を祀っています。

 

御劔社の周辺は特に「お塚」が多く配されており、その地形に大きな高低差があることから立体的で異様な雰囲気を醸し出しています。

社殿後方にある岩(上の写真の右側)にある注連縄の掛けられた岩は「劔石」と呼ばれる磐座です。一説にはこの岩に落ちた雷を封じたとして「雷岩」と呼ばれたとも言われています。

 

薬力の滝・薬力社・石井社

御劔社から下っていきます。

 

参道を下っていくと再び「お塚」の密集する空間があり、その一画に「薬力の滝」があります。樋を伝った水が流れ落ちる滝で、修験道における滝行場だったのかもしれません。

 

薬力の滝に隣接して「石井大神」「薬力大神」などが鎮座しています。

 

御膳谷奉拝所

さらに道を下っていきます。この途中に「傘杉社」などが鎮座しているのですが、管理してる方(?)に「写真は撮らないでくださいね、神様が写ってしまうので」などと言われてしまいました。

 

さらに下っていくと、道に並行した高台に「お塚」が密集した広い空間があり、ここは「御膳谷奉拝所」と呼ばれています。稲荷山を遥拝するところで、かつてここに御饗殿(みあえどの)と御竈殿(みかまどの)があり、一ノ峰、二ノ峰、三ノ峰に神供をしたと伝えられています。

現在は銅板葺切妻造で朱塗りの建物である「祈祷殿」が建っています。

 

この空間に大小様々な「お塚」がありますが、中でも祈祷殿のすぐ後方にある「力松大神」とやや右側の奥まったところにある「奥村大神」は目立つ存在です。

 

清滝

御膳谷奉拝所から北へ脇道が伸びており、ここを進んでいくとやはり多数の「お塚」が配されている空間に出ます。

 

この奥に「清滝」と呼ばれる滝があり、二本の石の樋を伝って水が流れ落ちています。ここも恐らく修験道の滝行場だったのでしょう。

ここから先の道は泉涌寺・東福寺方面へ抜けることができます。

 

眼力大神・石宮大神

道を戻って御膳谷奉拝所から正規ルートを下っていくと、「眼力大神」「石宮大神」が鎮座しています。一つの石碑である「お塚」に複数の神が同時に祀られるのはよくあることです。眼力大神は眼病の治癒に霊験があるとも言われています。

 

眼力大神・石宮大神の脇にある手水は狐が口に咥えた樋から水が流れており、その愛らしさからちょっとした名物になっています。

 

大杉社

 

眼力大神・石宮大神から下ったところに「大杉社」が鎮座しています。拝所の後方に枯れた杉の幹があり、注連縄が掛けられて祀られています。

 

伏見稲荷大社では古くから杉の枝を折って家に収めたことが『都名所図会』などにも書かれており、現在でも初午の際に「験(しるし)の杉」を授与しています。当社では杉を神の霊験のある神木と見なしてきたのでしょう。この大杉社の杉もそうした信仰の対象だったと思われます。

『山城国風土記』逸文の当社に関する記事では木を植えて根付けば幸福になり、枯れれば幸福にならないとする記述があります。この信仰が現代に至っても続いているのかもしれません。

 

荒木大神

大杉社から少し進むと四つ辻へ戻ってきます。さらに戻って三つ辻へ下り、ここからは残りの道を進んでいきます。

この道を経由して山を下りてくると道沿いに非常に多くの「お塚」があり、中には新興宗教と思しき会館などもあります。

この道沿いは非常に多彩な信仰施設があるので全ては紹介しきれません。中でも目を引くところに少し立ち寄ってみましょう。

 

こちらは「荒木大神」「白砂大神」「荒玉大神」の相殿。「お塚」ではなく、前拝殿・後拝殿・本殿があり、神社の体裁をとっています。由緒等は不明。

 

末廣大神

こちらは「末廣大神」。「お塚」ですが、狛犬でも狛狐でもなく「狛蛙」が配置されており異彩を放っています。

「福かえる賽銭箱」と書かれた賽銭箱がありますが、どういった由縁で蛙が推されているのかは不明。

 

境内に多くの紫陽花があることもこちらの特徴です。原生林で覆われた稲荷山では花が乏しいのですが、ここでは華やかな花を楽しむことができます。

 

産湯大神

山を下りきったところに「産湯大神」が鎮座しています。山の雰囲気は抜けて既に周囲は住宅地であり、お山巡りの最後のお塚とも言われています。この台地に二ヶ所の土穴があって、ここで狐が子を生んで育てていたことからこの穴に祈願すると安産であると伝えられています。

ここから南へ進むと伏見稲荷大社の石段上へ戻ってきます。

 

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社号 伏見稲荷大社 読み ふしみいなり 通称 旧呼称 三之峰稲荷大明神 等 鎮座地 京都府京都市伏見区深草藪之内町 旧国郡 山城国紀伊郡稲荷村 御祭神 宇迦之御魂大神、佐田彦大神、大宮能売大神、田中大 ...

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