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走田神社 (京都府長岡京市奥海印寺走田)

社号走田神社
読みはしりだ
通称
旧呼称妙見社 等
鎮座地京都府長岡京市奥海印寺走田
旧国郡山城国乙訓郡奥海印寺村
御祭神天児屋根命、武甕槌神、経津主神、姫大神
社格式内社、旧村社
例祭10月21日

 

走田神社の概要

京都府長岡京市奥海印寺走田に鎮座する式内社です。

当社の創建・由緒については詳らかでありません。現在は藤原氏の祖神である春日神を祀っていますが、近世以前は「妙見社」と呼ばれて妙見菩薩を祀っており、寂照院という寺院の鎮守でした。

地名の通り当地にはかつて海印寺という空海の弟子である道雄によって創建された寺院がありましたが、応仁の乱により焼失し現在は塔頭である寂照院のみが残っています。寂照院も明治の神仏分離によって当社と分けられました。

当社についてわかることは殆どありませんが、式内社では丹波国桑田郡にも同名の「走田神社」があり、社名から推して早稲を作る田の守護神だったとも言われています。

当社は正月13日に御千度詣りや弓講が行われる他、かつては同じ祭神を祀る大山崎町円明寺の「小倉神社」から神輿の渡御があったと伝えられています。

 

境内の様子

境内入口は新興住宅地のすぐ側。西向きに一の鳥居が建っています。

 

参道を進んでいくと左側に南向きの二の鳥居があるのですが…。その奥に続く石段はかつては鬱蒼とした木々で覆われていたのに、2019年5月参拝時では木々は全て切り株になっており、全く変わり果てた光景になっていました。

恐らく2018年の台風21号の被害によるものではないでしょうか。見るからに痛ましい状況です。

 

参考までに、昔訪れたときの様子を掲載しておきます。石段の両脇に豊かな森が形成されており、同じ神社と思えないほどです。

 

さて石段を上っていくとこのような特徴的な注連縄が掛けられており、これは「勧請縄」と呼ばれています。勧請縄とは奈良県や滋賀県などで見られる道切り、つまり悪霊や災厄を防ぐために集落の境界等に掛けられるものですが、京都府でも一部の神社等で見られます。特に「松尾大社」にはこれとほぼ同様のものがあります。

当社の勧請縄は榊の束が十二束ぶら下げられています。一束が一月分であり、十二束で一年分の災厄を防ぐという意味合いでしょう。

 

さらに上っていくと斜面の上に城郭のような石垣があり、その上まで石段が続いています。

 

走田神社 長岡京市

石垣の上は社殿の建つ空間です。社殿は南向き。拝殿は京都府では一般的な舞殿風拝殿です。

 

走田神社 長岡京市

本殿は一間社春日造ですが覆屋に納められています。この覆屋が変わった形で、妻入りの切妻造に裳階が付き、向拝が独立して付いたものとなっています。

 

本殿前の狛犬。砂岩製で、赤の綺麗な前掛けが印象的です。

 

本殿の右側(東側)に二社の小さな境内社が鎮座しています。左側が「稲荷神社」、右側が「熊野神社」です。

 

先の二社の奥に二棟の祠が向かい合わせに鎮座しています。こちらは社名・祭神等は不明。

 

本殿の左側(西側)の崖下に「春日神社」が鎮座しています。詳細は不明ですが、本社と同じ神を境内社でも祀る形になってると思われます。

 

前述の通り当社は以前とうってかわって斜面の木々が全て伐り払われています。それによって物寂しい光景となりましたが、このため逆に高台の上である境内からは京都盆地の様子を見渡すことができるようになっています。

台風による被害は地元の人々を落胆させたことでしょうが、その反面新たに眺めることのできるようになったこの景色はちょっとした救いになっているかもしれません。いずれまた樹勢豊かな森が回復することを願っています。

 

タマ姫
石段の途中にある注連縄が珍しいね!勧請縄っていうんだ!
勧請縄は滋賀県や奈良県では古い集落でよく見られるものよ。京都府では「松尾大社」の鳥居にある「脇勧請」がこれとよく似ているわね。
トヨ姫

 

由緒

案内板

走田神社

 

地図

京都府長岡京市奥海印寺走田

 

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