社号 | 森市神社 |
読み | もりいち |
通称 | |
旧呼称 | |
鎮座地 | 奈良県磯城郡田原本町大安寺 |
旧国郡 | 大和国式下郡大安寺村 |
御祭神 | 生雷神 |
社格 | |
例祭 |
森市神社の概要
奈良県磯城郡田原本町大安寺に鎮座する神社です。
当社の創建・由緒は詳らかでありません。
当社は御祭神として「生雷神」なる神を祀っており、記紀などの史料に登場しませんが壬申の乱に功のあった神だとされています。
『日本書紀』天武天皇元年(673年)七月二十三日の条では三社の神の託宣があり大海人皇子の軍を助言したことが記されており、社伝の「壬申の乱において功があった」とはこのことを指すと思われます。
ただし、『日本書紀』に登場する三社の神とは、
- 「高市社の事代主神」(式内社「高市御縣坐鴨事代主神社」/ 現在の「河俣神社」/ 橿原市雲梯町に鎮座)
- 「身狭社の生霊神」(「牟佐坐神社」/ 橿原市見瀬町に鎮座)
- 「村屋神」(「村屋坐彌冨都比賣神社」 / 蔵堂地区に鎮座)
の三神であって、「生雷神」なる神は登場しません。
これは「生霊神」が誤って「生雷神」となったものと思われ、室町時代の文書である『和州五郡神社神名帳大略注解』には「牟佐坐神社」の祭神は「生雷神」とあり、それ以来この神を祀るとする伝承が広まったようです。
当社はその橿原市見瀬町に鎮座する「牟佐坐神社」から勧請されたことが考えられます。(ただし現在の「牟佐坐神社」に「生雷(霊)神」は祀られていない)
なお、古くは壬申の乱に功のあった神を祀る神社(当社、「久須須美神社」(「事代主神」を祀る / 現在は「村屋坐彌冨都比賣神社」境内社)、「村屋坐彌冨都比賣神社」)を巡る渡御があったと言われています。
なお、当社は元々は西馬場なる地に鎮座していたといわれ(具体的な場所は不明)、大正十三年(1924)年に現在地に遷座しています。
一方、当社は本殿に隣接して式内社の「千代(チシロ)神社」を祀っています。
社伝によれば、元々十市郡八条村(現在の千代地区)に式内社「千代神社」が鎮座していましたが、天長年間(824~833年)に洪水のため流失し、北東に隣接する当地に漂着し、当社の境内社として祀られたと伝えられています。
その後、恐らく明治以降に千代神社は旧地である八条村に復帰し、その地に鎮座する「春日神社」の境内社にもなっています。
式内社「千代神社」についてわかることは極めて乏しく、奉斎氏族は不明で、神階昇叙などの記録も見えません。
現在の「千代神社」の御祭神は「八千々姫命」。この神は記紀に見えず詳細不明ですが、天棚機姫神の別名であるとも、その孫であるとも言われているようです。
上述のように旧地である千代地区(八条村)は江戸時代以前は十市郡でしたが、式内社「千代神社」は『延喜式』神名帳には城下郡(式下郡)に記されています。
境界の変更があった可能性があるものの、江戸時代中期の地誌『大和志』には「正保三年(1646年)此地を以て本郡(十市郡)に隷す」とありこの頃に十市郡に編入されたことを示唆する一方、天平十九年(747年)の大安寺の記録には既に「十市郡千代郷」とあります。
複数回の郡境の変更があった説、『延喜式』が誤って記載した説も考えられますが、千代神社の流されたと伝えられる時期が『延喜式』の完成の100年ほど前であることから、漂着先の式下郡だった当地に祀られていたのが反映されているのかもしれません。
式内社
境内の様子
当社は大安寺地区にある大安寺池の北西の一画、堤のように小高くなった空間に鎮座しています。この空間は児童公園も兼ねたもの。
境内の南側にこの空間へ登る石段が設けられています。
石段を上って左側(北側)に南向きの鳥居が建っています。
鳥居をくぐって少し進むと左側(西側)に小さな手水鉢が配置されています。導水施設はありません。
鳥居をくぐって正面奥にちょっとした森があり、そこに社殿が南向きに並んでいます。
拝殿は桟瓦葺の平入入母屋造。桁行五間でありながら小柄な建築です。
拝殿前に配置されている狛犬。花崗岩製のもの。
拝殿後方の基壇上に鳥居が建ち、ブロック塀に囲まれて二宇の本殿が建っています。
右側(東側)が本社本殿、左側が「千代神社」の本殿です。
いずれも銅板葺の春日見世棚造で、千代神社の方がやや小さなものとなっています。
本社本殿の右側(東側)に「池地□(蔵?)」と小さく刻まれた石碑が建っています。
池地蔵なる仏像の所在を示すものか、それともこの石碑自体が祭祀の対象なのかは不明。いずれにしても大安寺池と関わるものでしょう。
石碑のさらに右側(東側)に銅板葺・平入切妻造の小さなお堂があり、中に小さな石仏が安置されています。
或いはこれが「池地蔵」でしょうか?
地図
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