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春日神社 (奈良県山辺郡山添村春日)

社号春日神社
読みかすが
通称
旧呼称
鎮座地奈良県山辺郡山添村春日
旧国郡大和国山辺郡春日村
御祭神武甕槌命、経津主命、天児屋根命、大比売命
社格式内論社、旧郷社
例祭12月申の日

 

春日神社の概要

奈良県山辺郡山添村春日に鎮座する神社です。式内社「春日神社」は春日大社境内社の「榎本神社」に比定する説が有力ですが、当社に比定する説もあります。

社伝によれば、神護景雲二年(768年)の「春日大社」創建の際、鹿島神宮から武甕槌命が鹿に乗って奈良へ遷る途中に当地に立ち寄って一泊したと伝えられており、その跡地に春日神を祀ったのが当社だとされています。

春日大社の記録では武甕槌命は伊賀国名張郡一ノ瀬河(現在の三重県名張市夏見の積田神社)、薦生山(現在の三重県名張市薦生の中山神社)、大和国の城上郡安倍山(現在の奈良県桜井市阿部付近)、そして御蓋山へと遷ってきたと記していますが、当社では薦生山の次に当地を訪れたと伝えられています。

式内社「春日神社」を当社に比定する説の根拠は不明ですが、古くから当地を春日村と称したことに加え、上記の春日大社遷座伝承に関連して春日大社の前に武甕槌命を祀ったいわゆる「プレ春日神社」とも言うべき神社であることを重視したものと思われます。

ただ当地の地名「春日」はこの地名が先にあったと考えるよりは、先に当社が存在しこれに因んで名付けられたと考える方が自然でしょう。

当社にしても、当社が春日大社より古いかはともかく、少なくとも「春日神社」としての体裁を整えたのは春日大社が創建されて以降に春日大社から勧請されたことによると考えるべきです。

『延喜式』神名帳は春日大社は添上郡に記載されているのに対し当地は江戸時代には山辺郡でした。ただ、同じく旧・山辺郡だった近隣の中峰山地区に鎮座する「神波多神社」も『延喜式』神名帳には添上郡に記載されており、当地は元々は添上郡だった可能性があります。

当社で毎年12月申の日に行われる例祭では能楽が奉納され、山添村指定無形文化財となっています。

 

境内の様子

当社の一の鳥居は境内の北西250mほどの国道25号沿いに北向きに建っています。北向きのため晴れていれば昼間は逆光となり撮影するのが難しいところです。

 

一の鳥居の両脇に配置されている狛犬。花崗岩製の真新しいもの。両脚に縄が結ばれています。

 

一の鳥居をくぐって少し進み振り返った様子。平地の乏しい山に囲まれた地にあることがわかります。

 

参道は山の外周をなぞりつつも坂になっており、少しずつ標高を上げていく経路となっています。このため周囲よりやや高いところを通ることになり、参道からは春日の集落の様子を見下ろすことができます。

 

参道をさらに進むと石段があります。この石段が境内入口にあたります。

 

山添村 春日神社

石段を上り左方向へぐるっと180度回転すると当社の境内となります。

境内の南側には朱に塗られた二の鳥居が南向きに建っています。

 

山添村 春日神社

二の鳥居をくぐった様子。正面に南向きの社殿が建ち、その背後には巨大な杉の木が聳え立っており迫力のある境内です。

 

二の鳥居をくぐって右側(東側)に手水舎があります。やたら多くの手ぬぐいが掛けられています。

 

山添村 春日神社

山添村 春日神社

正面に建つ拝殿は桟瓦葺・平入入母屋造。土間になっており、正面は壁がなく他の三方は下半分だけ壁が設けられています。

 

拝殿前の狛犬。花崗岩製の新しいもので、ギョロッとした目が印象的。こちらも脚に縄が結ばれています。

 

山添村 春日神社 本殿

後方は朱塗りの塀に囲われて檜皮葺・一間社春日造の朱の施された本殿が建っています。

寛永十年(1633年)に建立された優美な建築で奈良県指定有形文化財。本殿身舎の組み物は珍しい形式とされています。

 

本社は殿の左側(西側)に「津島神社」が南向きに鎮座。

社殿は銅板葺の一間社春日造。

 

本社拝殿の右側(東側)に「神武天皇御陵遥拝所」と刻まれた石碑が南向きに建っていますが、南西方向にある畝傍山麓の神武天皇陵とは全く別の方角を向くことになり不可解です。別の場所にあったのを遷したのでしょうか。

石碑の右側(東側)には二社の境内社が鎮座しています。

 

石碑のすぐ右側(東側)に「大ノ宮神社」が南向きに鎮座。社名から祭神が推測できず、どのような神なのかよくわかりません。

社殿は銅板葺の一間社春日造。

 

大ノ宮神社の右側(東側)に「八幡神社」が南向きに鎮座。

社殿は銅板葺の一間社春日造。

 

石碑や大ノ宮神社の前方に建っている石灯籠は正中二年(1325年)の銘がある貴重なもので、山添村指定文化財となっています。

当地付近は中峰山地区の「神波多神社」の石灯籠など他にも鎌倉時代の石造物が豊富に残っており、花崗岩の産地であることもあってか、山奥の地でありながら中世に豊かな石造物文化のあったことが偲ばれます。

案内板

山添村指定文化財(昭和四十一年九月二十日指定)

石燈籠 春日神社

 

境内の左右には社務所もしくは公民館と思しき建物がそれぞれ建っています。

右側(東側)の建物の北端には祠らしきものを納めた部屋が設けられています。しかし社名・祭神は不明。

 

二の鳥居の北側には庭園や池があります。よく整備されており、山間の地でありながら風流を感じられます。

 

タマ姫
春日の神様はここを通っていったんだって!こんな山道を通るのも大変そう。
奈良県と三重県の境界付近には春日大社の創建に際して武甕槌命が通ったと伝えられるところが多いわね。それほど奈良と結びつきが強かったんじゃないかしら。
トヨ姫

 

地図

奈良県山辺郡山添村春日

 

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社号 春日大社 読み かすが 通称 旧呼称 鎮座地 奈良県奈良市春日野町 旧国郡 大和国添上郡奈良町 御祭神 武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神 社格 式内社、二十二社、旧官幣大社 例祭 3月13 ...

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