社号 | 住吉神社 |
読み | すみよし |
通称 | |
旧呼称 | |
鎮座地 | 兵庫県加東市下久米 |
旧国郡 | 播磨国加東郡下久米村 |
御祭神 | 底筒之男命、中筒之男命、上筒之男命、息長足姫之命 |
社格 | 式内論社 |
例祭 | 10月3日 |
式内社
住吉神社の概要
兵庫県加東市下久米に鎮座する神社です。式内社「住吉神社」の論社の一つとなっています。
旧・賀茂郡内を含む加古川流域には非常に多くの「住吉神社」が鎮座しており、その中のいずれが式内社「住吉神社」であるかを決定するのは極めて困難です。
『倭名類聚抄』播磨国賀茂郡に「住吉郷」が記載されており、これが加古川の左岸側にあったと推定されることから、式内社「住吉神社」も現在の加東市・小野市にあったであろうと考えられています。
式内社「住吉神社」および播磨国賀茂郡の「住吉郷」は、「住吉大社」(大阪市住吉区住吉)に伝わる古文書『住吉大社神代記』に見える「播磨国賀茂郡椅鹿(ハシカ)山領地田畠」と関連すると見られ、そこには住吉大社の杣山、つまり木材の供給源があったと考えられます。
加古川支流の東条川沿いには「掎鹿谷」の地名及び「掎鹿寺」が所在しており、この付近を広く「掎(椅)鹿山」と称したものと思われます。
社殿の造営や造船等に必要な木材を供給する掎(椅)鹿山を重視した住吉大社が、その地の拠点に住吉神を祀ったのが式内社「住吉神社」だったことが推測されます。
従って式内社「住吉神社」は掎(椅)鹿山のあった東条川沿い、もしくはそこからそう遠くない地に求めるべきでしょう。
一方で当社について、当社の東北東約2.5kmほどのところにある高野山真言宗の寺院「鹿野山朝光寺」の鎮守だったといい、同寺の記録によれば同寺の創建と同じ白雉二年(651年)の創建と伝えられています。
当社の北方約700mほどに「鹿野の冷泉」と呼ばれる塩気を含んだ泉があり、伝承では法道仙人が瑞光を追ってこの地を訪れた際に一人の翁が現れ、住吉明神であることを名乗ってここに寺院を建立することを勧め、神であることの証として塩水を湧き出させたと言われています。また、その教えに従って創建されたのが朝光寺とされています。
このように朝光寺は住吉信仰と密接に関わっており、これに関連して創建されたのが当社であるということなのでしょう。
ただし法道仙人は伝説的な人物であり、朝光寺の創建年代もより下る可能性が高いと言えます。
もし仮に当社が式内社「住吉神社」だったとすれば、当初は朝光寺よりも住吉大社との関わりの下で創建されたことになると思われます。
当社は加古川流域の住吉神社群の中でも(半ば伝説的とはいえ)古い由緒を持ち、また掎(椅)鹿山とされる地からもそう遠くないため、式内社だった可能性は十分あると言えることでしょう。
境内の様子
当社は下久米地区の集落背後にある丘の中腹に鎮座しています。
道に面して一の鳥居が南向きに建っています。
一の鳥居をくぐって道を進むと丘の麓に境内入口があり、二の鳥居が南向きに建っています。
ここから長い石段が伸びています。
石段を上っていくと境内を区画する廻廊等の構造物があり、廻廊の一部が社殿等の建つ空間へ入る門状の通路となっています。
上記の通路をくぐった様子。若干の平らな空間があり、奥に社殿が建っています。
上記通路をくぐってすぐ左側(西側)に銅板葺の妻入入母屋造の能舞台が建っています。
東播磨では神社境内に能舞台を設置する例が多く、民衆の娯楽として盛んに能などの芸能が行われたようです。
能舞台と接続する廻廊は能舞台における「橋掛かり」となっており、能が舞われる際には恐らく通路部分に板が渡されて往来可能な構造になるのではと思われます。
能舞台の奥側(西側)に手水舎が建っています。
動線としては一旦能舞台を回り込む必要があるため不便な印象。
上にも少し見たように、能舞台と相対するように社殿が南向きに並んでいます。
社殿は石垣上のやや小高い空間に建っており、石段の下には注連柱も配置されています。
拝殿は銅板葺の平入入母屋造。
拝殿前に配置されている狛犬。
拝殿後方に建つ本殿は銅板葺の三間社流造。
本社拝殿の左側(西側)に隣接して「天照皇大神社」が南向きに鎮座。
社殿は銅板葺の一間社流造。
天照皇大神の左側(西側)に隣接して「山神神社」が南向きに鎮座。
社殿は銅板葺の神明造状の流見世棚造。
山神神社の左側(西側)の斜面上に丘の上へと登れる石段があります。
ここを登って進んでいくと尾根上に石祠が鎮座しています。社名・祭神は不明。
道を戻り、社殿の建つ空間の左端(西端)にこのような境内社が東向きに鎮座しています。
右側(北側)に桟瓦葺の平入切妻造の拝殿が、左側(南側)に三基の朱鳥居が建ち、その奥に両方の一体化した覆屋が建っています。
左側の覆屋内には鉄板葺の一間社流造の社殿が納められています。
左側は明らかに稲荷系の神社である一方、右側の社名・祭神は不明。
反対側、本社本殿の右側(東側)に「荒神社」が南向きに鎮座。
社殿は銅板葺の一間社流造。
本社拝殿の手前右側(東側)に桟瓦葺の入母屋造の長床状の建物が廻廊に接続して建っています。
当サイトでは神事に用いられる詰所を「座小屋」と分類しており、この建物もこの類と思われます。
ただ能舞台や廻廊(橋掛かり)との関係を見ると、能舞台における「鏡の間」と見ておくべきかもしれません。
当社は秋には非常に美しい紅葉を楽しむことができます。
当地は内陸の冷涼地であるためか、周辺よりかなり早い時期に紅葉の見頃を迎えるようです。(訪問時は11月上旬)


地図
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