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水主神社 (京都府城陽市水主宮馬場)

社号 水主神社
読み みずし/みぬし
通称
旧呼称
鎮座地 京都府城陽市水主宮馬場
旧国郡 山城国綴喜郡水主村
御祭神 天照御魂神、天香語山神、天村雲神、天忍男神、建額赤命、建筒草命、建多背命、建諸隅命、倭得玉彦命、山背大国魂命
社格 式内社、旧府社
例祭 11月中旬日曜日

 

水主神社の概要

京都府城陽市水主宮馬場に鎮座する式内社です。『延喜式』神名帳には大社とあり、古くは有力な神社だったようです。

『延喜式』神名帳には久世郡とありますが、江戸時代には当地は綴喜郡でした。『延喜式』(もしくはその元となった『貞観式』)が編纂された以降に郡境が変更されたことが考えられます。また、社名及び当地の地名「水主」は『倭名類聚抄』山城国久世郡の「水主郷」の遺称です。

当社の創建年代は不明ですが、この地に居住した「水主氏」が祖神を祀ったのが当社と考えられます。『新撰姓氏録』山城国神別に火明命の後裔である「水主直」が登載されており、この氏族が当社を創建したものと思われます。

『延喜式』神名帳に十座とあり、これほど多くの神を祀る式内社は極めて異例です。またその中で「水主坐天照御魂神」「水主坐山背大國魂命神」を相嘗祭に預かるともあり、少なくとも十座の内二座はこの二神だったことがわかります。

水主氏の祖神である火明命は別名として『日本書紀』一書に「天照国魂彦火明命」と見え、また『先代旧事本紀』には「天照国照彦天火明饒速日尊」とあります。後者は物部氏の祖神の饒速日尊と同神との扱いになっています。水主氏と物部氏が同祖なのかは不明ながら、『延喜式』に見える「水主坐天照御魂神」とは水主氏の祖神としてのこの神を指したものと思われます。

当社の御祭神の「天照御魂神」「天香語山神」「天村雲神」「天忍男神」「建額赤命」「建筒草命」「建多背命」「建諸隅命」「倭得玉彦命」は『先代旧事本紀』に見える一系の神々であり、尾張氏と同系であることが示されています。同紀では倭得玉彦命の子である「玉勝山代根古命」は山代水主の雀部連、軽部造、蘇冝部首らの祖であると註が付いており、この神は当社祭神の「山背大国魂命」と同神であると考えられるようです。『延喜式』に相嘗祭に預かると記載された二神はこれら十世の神々の第一世と第十世にあたり、水主氏の祖神の中でも特に重視された神と見做されたのでしょう。

平安時代以降、旱魃の際に当社で祈雨が行われたことが国史で頻りに見え、水神として朝廷からの崇敬が厚かったようです。当地は木津川のすぐ側に立地しており、木津川の水流を守護する、まさに社名の通り「水の主」たる神格があったのかもしれません。恐らく水主氏も木津川の水運を掌握する、治水を行うなど木津川と深い関わりのあった氏族だったのでしょう。

樺井月神社

水主神社の境内に鎮座する式内社です。『延喜式』神名帳には大社とあり、古くは有力な神社だったようです。

樺井月は「かばいつき」と読み、元は木津川の対岸にあったという綴喜郡樺井(現在地不明)に鎮座していましたが、木津川の氾濫により寛文十二年(1672年)に水主神社に遷座したと伝えられています。

御祭神は「月読命」。

綴喜郡には同じく「月読命」を御祭神とする式内社「月読神社」があり、鎮座地の大住地区は当社の旧地からそう遠くない地だったと思われます。大住の地は大隅隼人の人々がこの地に移住したことに因むと言われ、彼らの持つ月神の信仰が月読神社の創建となったことが考えられます。

当社についても同様に南九州の人々が信仰した月神に起源を持つかもしれません。少なくとも大住の月読神社とは立地からしても何らかの関係があった可能性が考えられましょう。

また、社伝によれば承和二年(845年)に山城国綴喜郡・相楽郡で牛馬が多数斃死した際、当社の祟りであるとの占いが出たので勅使が当社に祈願したところ忽ち収まったと伝えられています。これ以来、牛馬の守護神としても信仰を集めたようです。

 

境内の様子

境内の南方100mほどのところに当社と境内社の樺井月神社の社号標が建っています。

 

社号標のところから進んでいくと南南東向きの一の鳥居が建っており、その後方、田圃に囲まれた境内は鬱蒼とした森となっています。

 

境内入口には二の鳥居が建っています。

 

二の鳥居をくぐった様子。境内は密度の高い森となっているため晴れた昼間でも暗い空間になっています。

 

参道の右側(東側)に球形の素朴な手水鉢があります。

 

参道を進むと奥に南向きの社殿が並んでいます。

拝殿は瓦葺・平入入母屋造の割拝殿。通路はやや左側に寄っています。山城国では主に舞殿風拝殿が見られますが、南部では当社のように割拝殿もよく見られるようになってきます。

 

拝殿の前に手水舎があります。井戸があるものの取水する機構が無く、現在手水としては用いられていないようです。

 

当社では通常、割拝殿に柵の扉が閉められており、本殿の建つ空間へ立ち入ることができません。

が、昔参拝した際は祭事のためか扉が開いており、その際には本殿前で参拝することができました。以下の写真はその時のものです。

 

本殿は檜皮葺の一間社流造で、中門と透塀で囲われて建っています。

 

本殿前の左側(西側)に境内社の「樺井月神社」が鎮座しています。御祭神は「月読命」。元は木津川の対岸に鎮座していた式内社でしたが、洪水の為に当社境内に遷座したと伝えられています。詳細は上記の概要をご覧ください。

当社は牛馬の神ともされたためか、社殿の前に牛の石像が置かれていました。

 

境内の南西に絵馬殿が建っており、絵馬が掲げられています。

絵馬殿の規模の割に絵馬の数はそう多くありません。神社の規模に比べて大仰な施設であることに加え、つっかえ棒が設けられており老朽化が進んでいそうなことから、古く神社の何らかの社殿だったものが転用されたのかもしれません。

 

タマヨリ姫
水主神社って社名からして水神だったのかな?「水の主」というくらいだし。
国史には当社で雨乞いが行われたことが数多く見えるから、水神として信仰されたみたいね。ただ、水神だから「水主」なのか、水主氏が奉斎したから「水主」なのかはわからないわ。
トヨタマ姫

 

由緒

案内板「由緒」

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由緒

水主神社は往古より世に聞えた名神大社なり。其祭神は天照御魂神(饒速日尊)、天香語山神、天村雲神、天忍男神、建額赤命、建諸隅命、建筒草命、建多背命、倭得玉彦命、山背大国魂命の十柱にして天照御魂神が即ち火明命にて氏の高祖なり。第十世山背大国魂命にいたり山背に移り大に其国に功烈あり。之を尊みて山背大国魂命という。其の子孫山代水主連となり世々其の祀を奉としものなり。延喜式には水主社十座並大月次新嘗と定められ特に天照御魂神と山背大国魂命とは四季祭相嘗祭に預り又祈雨大神の内に加わり仁寿貞観の頃加茂両社松尾稲荷住吉大社等諸社と共に新年祈雨の奉幣あり。朝家御崇敬上下帰依信仰尤も厚しと伝う。

樺井月神社 祭神は月読命にて今より千二百五十年前文武天皇大宝元年に神稲を賜り貞観元年従五位上に進叙せらる。承和十二年五月京畿に牛疫流行殊に綴喜相楽両郡斃死して殆んど盡きんとするやとうしゃに奉幣祈禳行われ日ならずして止む。延喜式には大社に列し四度官幣祈雨祭に預れる事国史に見ゆ。古来朝廷より牛馬の守護神として祈願奉幣を賜るは当社以外に類を見ず。尚当社は綴喜郡に鎮座せしも度重なる木津川洪水のため二百八十年前当地に遷座す。

衣縫神社と申すは天地ひらけ豊組野尊の御神徳にして天照大神の時より衣類の女神の仕業として世に備れり。左右に座す二柱の神達は神代天香語山命の御子天村雲命より九世の孫にて人皇十三代成務天皇の御宇淡海国志賀の高穴穂の宮に仕え奉り糸縫針の職業を主宰し給う故に末代の今に至るまで其職たる人達は此の大神を祖神として敬い奉り給う。

昭和五十四年十一月
水主神社

石碑「樺井月神社 由緒書」

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樺井月神社 由緒書

本社祭神ハ月読命ニシテ延喜式々内大社に列セラレ月次新嘗ニ与ル等古来格式高キ神ナリ。貞観元年従五位上ニ進メラル。承和十二年綴喜相楽両郡ニ蝱虫多発シ牛馬コレニ咬マレテ斃死相次グ。樺井道祖神ノ祟リト占サレ勅使参向奉幣祈念セシ所忽チ治マル。爾来牛馬防疫ノ神トシテ名声ヲ博シ広ク朝野ニ尊崇ヲ受ク。元綴喜郡樺井ノ地ニ鎮座アリシカド木津川氾濫ニヨリ寛文十二年(一六七二年)当水主神社境内ニ遷座サレ今日ニ至ル。

平成六年一月吉日

 

地図

京都府城陽市水主宮馬場

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