於神社 （奈良県北葛城郡広陵町大塚）

大塚

祭神　市杵島姫命

於神社の東側に接して、石段を登った高台に鎮座します。祭神は市杵島姫命です。天照大神と素戔嗚尊が「誓約」をした際に生まれた五男三女神の一神です。

三女神とは多岐津姫・多紀理姫と市杵島姫神のことであり、筑前国宗像大社（現福岡県宗像郡玄海町鎮座）に祀られ（奥津・中津・辺津宮）、海上交通の守護神として崇められています。後には宗像大社を移したとされる安芸国厳島神社（現広島県佐伯郡宮島町鎮座）に祀られ、その後各地に勧請されます。明治二十四年（一八九一）の『神社明細帳』によれば、元禄三年（一六九〇）十月に安芸国厳島神社から勧請して建立し、元治元年（一八六四）十月に再建したとされます。

住吉神社

祭神　上筒男命・中筒男命・底筒男命

於神社の鳥居右前方に住吉神社が鎮座します。

祭神の上筒男命・中筒男命・底筒男命は合わせて住吉神とよばれ、伊弉諾尊が黄泉の国から帰還して禊祓いをした際に綿津見三神とともに生まれた神であり、軍神・海上交通の守護神です。拝殿はなく、神殿は小型の流造で玉垣をめぐらせています。石灯籠一基は住吉大明神と刻まれ、播州惣連中・袋屋仲三郎方住吉講中が寛政六年（一七九四）二月晦日に建立したものです。

「ふるさとの文化財をたずねて」広陵町古文化会H24発行

祭神　天照皇大神・天児屋根命・品陀別命

大塚の西方、こんもりと繁った森が於神社です。神社の入口には、石でつくられた立派な鳥居があり、その横には「式内於神社」と書かれた石柱が立てられています。鳥居を抜けると拝殿までは広い境内となっており、落ち着きを感じられます。この境内の隅には百度石が立てられており、願をかけにくる人もいます。

本殿は一間社春日造銅板葺で朱塗りが施されています。

この於神社は『延喜式』神名帳に記載される於神社に比定されていますが、創祀・由緒は日記、古文書が焼失しており、それを知ることができません。また当神社には御神体として、明治維新まで木鏡三面が祀られていましたが、神仏分離の際に同大字の浄徳寺に移され、保存されています。この木鏡三面の表面には梵字が書かれています。

尚、この神社の南には陵墓参考地新山古墳があり、奥の院のような観を呈しているのが窺えます。

「ふるさとの文化財をたずねて」広陵町古文化会H24発行