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火雷神社 (奈良県五條市御山町)

社号 火雷神社
読み ほのいかずち
通称
旧呼称 若宮 等
鎮座地 奈良県五條市御山町
旧国郡 大和国宇智郡御山村
御祭神 火雷神
社格 式内社、旧村社
例祭 10月23日

 

火雷神社の概要

奈良県五條市御山町に鎮座する式内社です。

当社は本来は社名の通り自然神としての雷神を祀ったと考えられます。

宇智郡の式内社には当社の他にも雷神を祀ったと考えられる「宮前霹靂神社」(西久留野町に鎮座)があり、旧・宇智郡(現在の五條市北部)では雷神を信仰するのが盛んであったことが窺われます。

古来より雷、特に夏場の夕立に伴い激しく鳴り響く雷は稲の実りを促すものと考えられており、豊穣を司る神として雷神が祀られたことが考えられます。

金剛山地と紀伊山地に挟まれた当地では特に夏場に山地にぶつかった上昇気流によって積乱雲が発生しやすく、雷を伴うことも頻繁にあります。こうした風土によって当地で盛んに雷神が祀られたのかもしれません。

また当地は丹生川が吉野川と合流する極めて重要な地に鎮座しており、雨をもたらす雷神、豊穣をもたらす雷神としての神格に関連し、田畑を潤す水を司る水神としての神格を担っていたことも考えられるかもしれません。

 

一方、社伝によれば、「井上内親王」が宇智郡で産んだとされる雷神を慰めるために延暦十九年(800年)に創建されたと伝えられています。

『続日本紀』によれば、光仁天皇の皇后である井上内親王は讒言により御子の他戸親王と共に当地に流罪となり、幽閉先で他戸親王と共に薨去したとあります。

これ以降に天変地異が頻りに発生し、井上内親王らの祟りであるとして恐れられ、いわゆる御霊信仰の一環として京都の「上御霊神社」で祀られた他、配流先であり薨去の地である宇智郡においても「霊安寺」および「御霊神社」(霊安寺町に鎮座/霊安寺は現在は廃寺)で祀られました。

これ以来、宇智郡一帯ではこの御霊神社の信仰が非常に盛んになり、宇智郡内の各地で御霊神社が勧請され、既存の神社でも御霊神社の信仰の影響を受けるようになりました。

当社もその一つであり、元々は自然神としての雷神を祀っていたものの、井上内親王が激しい祟りにより雷に擬えられ、雷神と同一視されるようになった、或いは雷神を産んだと考えられるようになったことが推測されます。

本来は自然神としての雷神を祀っていたものの、井上内親王に関連付けて信仰されるようになったのは、同じく宇智郡内の雷神を祀る式内社「宮前霹靂神社」でも同様です。

ただ『続日本紀』を見る限りでは、井上内親王が当地に配流されたのは高齢になってからであり、また当地での滞在も僅か半年で、当地で出産したとの記録も皆無であるため、井上内親王が当地で出産したとするのは明らかに後世の創作です。

宇智郡内において井上内親王への信仰が極めて高まったために、当社や宮前霹靂神社といった既存の神が井上内親王と習合した結果、多くの役割が井上内親王に付与されたものなのでしょう。

 

当社は江戸時代以前は「若宮」と称し、井上内親王の御子としての雷神を祀ると信仰されたことによる名称と思われます。

現在の御祭神は「火雷神」であり、自然神としての雷神に戻されているようです。

現在は行われていませんが、かつては西久留野町の「宮前霹靂神社」において渡御から戻ると狼煙を上げ、これを合図に当社で渡御が行われたと言われ、宇智郡内の雷神にまつわる二つの式内社の関係性が窺われます。

 

境内の様子

当社は御山町の集落の北の外れ、田畑の広がる一帯の奥に鎮座しており、境内は針葉樹の多い森を構成しています。

辺りは長閑な田園風景といった風情ですが、当社の背後は崖となっており、丹生川が吉野川に合流する極めて重要な地です。

 

火雷神社

境内入口には真っ赤な両部鳥居が南西向きに建っています。

 

鳥居をくぐって左側(北西側)に手水鉢が配置されています。

手水鉢には「若宮神前」と刻まれており、かつての呼称の痕跡が残されています。

 

火雷神社

火雷神社

境内奥に社殿が南西向きに並んでいます。

拝殿は桟瓦葺の平入切妻造の割拝殿。桁行五間の建築ですが、一間あたりがかなり長いので桁方向にかなり大きな建築であると言えます。

また拝殿前に配置されている灯籠と狛犬の基壇には中央構造線の外帯(おおむね南側)に接する三波川変成帯に分布する結晶片岩が用いられ、この地の特徴が表れています。

 

狛犬は加工の容易な砂岩が用いられています。耳と目がかなり大きく、阿形は口を横に大きく開いているのが特徴です。

 

拝殿後方の塀で囲われた空間に銅板葺・一間社流造の本殿が建っています。微かに彩色が施されているようにも見えます。

 

本社本殿の左側(北西側)に「春日神社」が南東向きに鎮座。

社殿は鉄板葺(?)の流見世棚造。

 

本社本殿の右側(南東側)に「八幡社」が北西向きに鎮座。

社殿は鉄板葺(?)の流見世棚造。

 

本社拝殿前の右側(南東側)に三社の境内社が花崗岩の基壇上に北西向きに並んでいます。

祀られているのは左側(奥側/北東側)から次の神社となっています。

  • 御霊社
  • 蛭子社
  • 桜木社

社殿は中央の蛭子社のみが鉄板葺(?)の流見世棚造、他の二社は鉄板葺(?)の春日見世棚造です。

 

鳥居をくぐってすぐ左側(北西側)に「八坂社」が南東向きに鎮座しています。

社殿は板葺の春日見世棚造。桟瓦葺の妻入入母屋造(後方は切妻造)の覆屋に納められています。

 

タマヨリ姫
雷の神様を祀ってるんだね!この辺りってやっぱり雷が多いのかな?
金剛山地と紀伊山地に挟まれて夏場に積乱雲が発達しやすいってのはあるわね。同じ郡内の宮前霹靂神社も雷の神様よ。
トヨタマ姫

 

地図

奈良県五條市御山町

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