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波比売神社 (奈良県吉野郡下市町栃原)

社号 波比賣神社
読み はひめ
通称
旧呼称 金岳八幡宮、黄金岳宮 等
鎮座地 奈良県吉野郡下市町栃原
旧国郡 大和国吉野郡栃原村
御祭神 水波能売神、応神天皇
社格 式内社
例祭 10月1日

 

波比賣神社の概要

奈良県吉野郡下市町栃原に鎮座する式内社です。

当社は天平二年(730年)十一月十一日に創建されたと伝えられていますが、由緒については詳らかでありません。

当社は標高531mの「栃原岳」の山頂に鎮座しており、吉野三山(栃原岳、銀峯山、櫃ヶ岳)の一つともなっています。

栃原岳は「黄金岳」とも呼ばれ、櫃ヶ岳が銅山とも称したことと併せ、吉野三山は「金」「銀」「銅」で構成されていることになります。

吉野三山で実際に金属を産したかは不明ですが、栃原岳は含銅硫化鉄を含む鉱石で覆われていたともされています。

 

当社は江戸時代以前は「金岳八幡宮」「黄金岳宮」などと呼ばれ、栃原岳が黄金岳とも呼ばれたことを反映した呼称となっています。

明治年間の神仏分離までは神宮寺として真言宗の寺院「金山寺」もありました。

現在の当社は水神である「水波能売神(案内板には「弥都波比賣神」)」と、かつて八幡宮だったことを受けて「応神天皇」の二柱を御祭神として祀っています。

本来は社名の通り「ハヒメ」なる神を祀っていたと思われ、記紀などの史料に登場しない神なので如何なる神であるかは不明です。

案内板の言うように罔象(みずは)の姫神、つまり水神を祀ったか、それとも山頂に鎮座することから栃原岳を神体山とする山岳信仰の神だったか、また或いは金属神だったのかもしれません。

 

このように当社に関することで明らかな部分は乏しいですが、一方で当社には古くからの宮座行事が伝承されています。

氏子の中から「宮受け」をする二人を選び、この二人が年齢順に「兄座」「弟座」として当家となり、一年間当社に奉仕する他、御幣を邸内で七日間祀る、親類や縁者を招いて振る舞うなどの行事を行います。

この行事は古い風習を残す貴重な民俗として下市町指定文化財ともなっています。

集落から離れた地に鎮座しつつも氏子集落と密接な関わりの元で古くから祭祀されてきた様子が窺われます。

 

境内の様子

栃原岳の東麓、奈良交通の上栃原停留所のすぐ前に当社の一の鳥居が東向きに建っています。

なお、バスは平日に早朝と夕方の二往復しか無く、さらに休日は運休となる(2020年現在)のでバスでの訪問は現実的でありません。

 

一の鳥居をくぐってすぐに二の鳥居が東向きに建っています。

一の鳥居は石造の明神鳥居であるのに対し二の鳥居は木造の両部鳥居となっています。

 

一の鳥居と二の鳥居の間に配置されている狛犬。砂岩製です。

 

二の鳥居から先はひたすら山道です。舗装されているのでさほど苦ではないものの、これが山頂まで続きます。

 

参道途中に鎮座する祠。当社に属するものと思われますが社名・祭神は不明。

銅板葺の春日見世棚造の社殿。

 

山頂近くまで登るとやや開けたところとなり、正面には巨大な杉の木が聳え石灯籠が並び、いよいよ神社の境内らしい厳かな雰囲気に包まれます。

 

この道の突き当りに手水舎が建っています。

 

手水舎の左側(北東側)に石段が続き、その上に社殿が南西向きに並んでいます。

石段上に建つのは木々で見えにくいですが割拝殿です。

 

割拝殿の前に配置されている狛犬。こちらも砂岩製ですが、鳥居の側にあったものと比べるとずんぐりとしています。

 

割拝殿を境内側および内部から見た様子。桟瓦葺の平入入母屋造で桁行五間の建築です。

壁は社殿側には設けられておらず、床も張られず土間となっており、参道からの印象とは裏腹に開放的な建築です。

また割拝殿には鈴の緒が設けられています。恐らくまずはこの鈴の緒を鳴らすのが作法なのでしょう。

 

波比売神社

波比売神社

先の建物をくぐると石畳がまっすぐ敷かれ、その先に銅板葺・平入入母屋造の拝殿が建っています。

拝殿はガラス張りとなっているのが特徴。

 

拝殿後方に瑞垣に囲われて銅板葺・二間社流造の本殿が建っています。

本殿は朱などの彩色が施されており、素木の拝殿と比べると随分と華やかな印象です。

当社の拝殿や本殿は平成十年(1998年)の台風7号で大きな被害を受け、現在の社殿はその後平成十二年(2000年)に改築したもののようです。

 

本社拝殿の右側(南東側)のやや土地の高くなった空間に境内社や遥拝所などが配置されています。

 

この空間の手前側(南西側)に神明鳥居が建ち、その奥の基壇上に神籬らしき木が植えられています。

遥拝所なのでしょうか。詳細不明。

 

先の遥拝所らしきものの左側(北東側)に境内社が南西向きに鎮座しています。社名・祭神は不明。

社殿は銅板葺の流見世棚造。

 

境内社の左側(北東側)にこのような石碑が建っています。辛うじて「□□□宮遥拝所」と刻まれているのが読み取れます。どこへの遥拝所でしょうか?

 

道を戻り、境内から少し道を下ったところに展望台が設けられています。

 

この栃原岳の展望台から眺める景色は最高です。

西側の景色が開け、手前側は果樹園に利用されているなだらかな山々が、奥側には五條市の市街地が、さらにその背後には金剛山地が見渡せます。

是非とも天気の良い日に訪れたいところです。

 

タマヨリ姫
この山は昔は黄金岳って呼ばれてたの?金がいっぱいあったのかな!?
どうかしらね。金属を産出したって説もあるみたいだけどイマイチはっきりしないわ。
トヨタマ姫

 

由緒

案内板「波比賣神社と栃原岳」

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波比賣神社と栃原岳

栃原岳の頂上に位置するこの波比賣神社(はひめじんじゃ)は、天平2年11月11日に創建されたと伝えられており、水の神・雨師の神である「弥都波比賣神」が祀られています。

一方、この社が建つ栃原岳は、櫃ヶ岳(下市町・西吉野村)、白銀岳(西吉野村)とあわせて吉野三山のひとつに数えられており、櫃ヶ岳が銅山、白銀岳が銀山、この栃原岳が金山とも別称されているほか、櫃ヶ岳と白銀岳の頂上にもそれぞれ水の神を祀る社が設けられていて、今も人々の信仰を集めています。

栃原岳の標高は526.8mでこの付近からは下市町に接する大淀町や五條市の市街地を一望できるほか、大坂府との県境に位置する金剛山や葛城山、二上山などのすばらしい山並みを見渡すことができます。

案内板「波比賣神社宮座行事」

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下市町指定文化財

波比賣神社宮座行事

下市町栃原

平成二十年一月二十三日指定

波比賣神社の宮座行事は、氏子の中から「宮受け」をする二人を選び、この二人が年齢順に「兄座」と「弟座」にわかれ、「當家(とや)」を受ける。

當家は、一生に一回だけ当たり、一年間波比賣神社の給仕を務める。祭礼の当日のみ本殿の扉あけがあり、當家の「御幣」に「神移の式」が行われ、その「御幣」を各当家に持ち帰り七日間お祭りをする。

ついで兄座、弟座は九月末に親類、縁者を招待し、神様を祀り宮座當家の振る舞いをする。

宮座當家の振る舞いの中で「硯蓋」という膳が出されるが、この膳は、江戸時代の膳組で、貴重な文化である。

また、室町時代には、栃原猿楽座があり、宮座行事で奉納されていた。

平成二十三年三月三十一日

下市町教育委員会

 

地図

奈良県吉野郡下市町栃原

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