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波宝神社 (奈良県五條市西吉野町夜中)

社号 波寶神社
読み はほう
通称
旧呼称 古田大明神、若桜宮、神蔵大明神 等
鎮座地 奈良県五條市西吉野町夜中
旧国郡 大和国吉野郡夜中村
御祭神 上筒之男命、中筒之男命、底筒之男命、息長帯日売命
社格 式内社、旧郷社
例祭 9月の第2日曜日、10月9日

 

波寶神社の概要

奈良県五條市西吉野町夜中に鎮座する式内社です。

当地の地名「夜中」について、神功皇后が三韓征伐からの帰還の際、紀伊へ赴く途中にこの山で休み、その際に白昼であるにも関わらず夜中のように暗くなり、神に祈ると再び日が照りだし明るくなったのでこの地を「夜中」と名付けたと伝えられています。

記紀における天岩戸を彷彿させるような伝承であり、日蝕を思わせるものです。

一方で神功皇后が祈ったという神が特に当社の神であるとする資料は管見では見当たらず、この伝承と当社との関連性は明らかでありません。

ただ寛文十二年(1672)に建立された奈良県指定有形文化財の本殿には二棟の本殿を連結する板壁に大きな日輪に月輪が重なる日蝕の様子が描かれており、上記の伝承を元に描かれたものとなっています。

一方で当社の御祭神は「上筒之男命」「中筒之男命」「底筒之男命」「息長帯日売命」の四柱です。住吉大社の御祭神と同じですが、当社が住吉信仰の神社であるとする痕跡は見当たらず、上記の伝承に基づき神功皇后(息長帯日売命)とその関連神としての住吉三神が祀られたものであることが推測されます。

神功皇后の伝承は九州から瀬戸内、和歌山県北部の沿岸に多く分布していますが、当地付近で神功皇后に関する伝承があるのは極めて珍しい例です。瀬戸内方面と何らかの繋がりがあったのかもしれません。

 

一方で当社の鎮座する標高612mの山は「銀峯山」あるいは「白銀岳」と呼ばれ、吉野三山(栃原岳、銀峯山、櫃ヶ岳)の一つです。

銀峯山とは吉野山から大峰山にかけての山々の総称である「金峯山」と対になるものとも考えられそうですが、栃原岳を金山、櫃ヶ岳を銅山と呼んだことに対するものとも言われているようです。

当地も修験道の霊場となり、明治年間まで境内にあった寺院「銀峯山神宮寺」は修験道の拠点として大いに栄えていました。

伝承では役行者がこの山で秘法を行うと女神が現れ、国家を鎮護し、群衆を化導すべしと告げて石室に入ったので「神蔵大明神」と称したとも言われています。

修験の地となる以前にこの地で女神が信仰されていたことが示唆されており、或いはこの女神こそが当社の本来の神であり、神功皇后が祈った神であったかもしれません。

本来の当社の信仰は銀峯山を神体山として祭祀する素朴な山岳信仰だったことが考えられ、恐らく住吉三神や息長帯日売命は後世に祀られるようになったものでしょう。

江戸時代以前は「古田大明神」「若桜宮」「神蔵大明神」など様々な称号があり、当社の信仰が一様でなかったことが窺えます。しかしこのような山間の地に古くからの霊場が存続し、かつ立派な本殿も建っているのは間違いなく修験道によって支えられたことによるものでしょう。

 

境内の様子

波宝神社

波宝神社

当社は吉野三山の一つ「銀峯山」の山頂に立地しています。

社殿の約250m南西に朱鳥居が建っており、ここが境内入口となっています。

周囲に果樹園が広がっているため山奥といった雰囲気はありませんが、山頂付近のため周囲に集落は全くなく、人里離れた静かな一帯となっています。

 

鳥居をくぐると長い上り坂の参道がS字状に続きます。

 

参道を登りきると開けた空間になっており、ここからは北東方面へ一直線に社殿まで続いています。

 

ここを進むと左側(北西側)に手水舎が建っています。手水鉢には菊紋と桜紋が彫られています。

 

波宝神社

手水舎のところから石段を上っていくと正面に社殿が南西向きに並んでいます。

手前側に建つ拝殿は本瓦葺・平入入母屋造で向拝の付いた割拝殿。

三間一戸ながら大規模な建築で、割拝殿といえば比較的簡素な建築の多いのに対し当社の割拝殿はかなり豪壮な印象です。

 

割拝殿の通路の左右上部に掲げられている絵馬。

 

そして割拝殿の右側の部屋には多数の「扇御幣」が置かれています。これらの棒にはそれぞれ「○○區」と書かれており、氏子内の集落を示しているようです。

当社で毎年9月の第2日曜日に行われる「岳祭り」においてこれが掲げられ、どこの集落の所属であるかを示すもののようです。

 

波宝神社

波宝神社

割拝殿の通路をくぐると正面に銅製の神明鳥居が建ち、その後方の石垣上に瑞垣に囲われて本殿が建っています。

本殿は檜皮葺の一間社春日造が二棟並び、その間を板壁で連結し一続きにした珍しい形式。板壁には当地の伝承に関連する日蝕の図が描かれています。

寛文十二年(1672年)に建立された貴重な建築で奈良県指定有形文化財となっています。

なお、右側の社殿に住吉三神(「上筒之男命」「中筒之男命」「底筒之男命」)、左側の社殿に神功皇后(「息長帯日売命」)を祀っています。

 

当社本殿前の左側(北西側)に境内社が南東向きに建っており、札には「□原神社」とあります。

社殿は銅板葺の春日見世棚造。

 

本社本殿の右側(南東側)に建つ境内社。こちらは南西向きに建っています。社名・祭神は不明。

社殿は銅板葺の春日見世棚造。

 

本社本殿前の右側(南東側)に一つの基壇上に四社の境内社が北西向きに並んでいます。いずれも社名・祭神は不明。

右から二社目のみ銅板葺の流見世棚造で、他の三社は銅板葺の春日見世棚造。

最も左側(北東側)のものは一回り小さな社殿で、狐の置物があることから稲荷系の神社でしょう。

 

道を戻り、本社拝殿の左側(北西側)にこのような建物が建っています。桟瓦葺の寄棟造で、軒唐破風付きの妻入入母屋造の向拝が右側に寄せられて設けられています。

社務所とは別にこの建物があり、用途不明の建築です。それほど古い建築とは思われませんが、寄棟造であるなど仏教風の要素が見られるため、かつて当社の境内にあった寺院「銀峯山神宮寺」の名残なのではとも疑われます。

この建物についての情報をお持ちの方は是非とも @jun_yu_roku までお寄せくださいませ。

 

先の謎の建物と手水舎との間に神明鳥居が建ち、その後方に「祖霊社」「忠魂社」の相殿が南東向きに建っています。

社殿は銅板葺の一間社流造。

 

タマヨリ姫
夜中って地名は珍しいね!お昼なのに夜中みたいに真っ暗になったってお話があるんだ!
記紀の天岩戸の段を彷彿させる伝承ね。もしかしたら日蝕のことが反映されているかもしれないわね。
トヨタマ姫

 

由緒

案内板「波宝神社本殿 二棟 附 棟札三枚」

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奈良県指定有形文化財(建造物)

波宝神社本殿 二棟 附 棟札三枚

五條市西吉野町夜中

吉野三山の一つ、銀峯山(白銀岳、標高六一四m)は、古くから神南備山として信仰されてきました。この山頂に鎮座する当社の最古の記録は、『日本文徳天皇実録』の天安二年(八五八)三月に官社となった記事です。また、平安時代前期の『延喜式』神名帳の中野大和国吉野郡十社の一つ「波宝神社 鍬」に比定されています。

祭神は、住吉大神と神功皇后とされています。当社は「古田大明神」「若桜宮」とも称され、山麓の古田郷の村々(旧白銀村内、現五條市西吉野町の北部地域)の氏神として崇拝されてきました。また、役行者が当山で秘法を行った伝承から「神蔵大明神」とも称され、古来、大峯修験の先達が入峰修行した先例がありました。幕末には有栖川宮の祈願所ともされ、文久三年(一八六三)には、天誅組の本陣が当社に置かれました。境内には明治初年まで、銀峯山神宮寺が存在していました。

南面する現在の本殿は、江戸時代の寛文十二年(一六七二)の建立で一間社春日造、檜皮葺、礎石建の社殿を二棟連ねた連棟社殿です。それぞれの社殿の屋根は独立していますが、身舎前面を障壁で繋ぎ、一続きの建物のように見せています。柱頭・長押・頭貫・組物などは極彩色で装飾され、障壁・壁面には、鶴・松・波濤などの華麗な壁画が描かれています。当本殿は、春日造の連棟社殿形式の中でも、縁廻りなどに強い一体感を持ち、同形式の展開を示す遺構として史料的価値が高く、県内における十七世紀の特異な形式の神社本殿として重要と評価されています。

五條市教育委員会

案内板「奈良県指定有形文化財 波宝神社 本殿二棟」

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奈良県指定有形文化財 波宝神社 本殿二棟

ここ白銀岳(六一二米)は、古代から神の山として信仰を集めていたようであるが、当神社は平安時代になって、天安二年(八五八)に官社となり、延長五年(九二七)の延喜式神名帳にしるされる古社である。上来、大峯修験と深いかかわりを持ち、また境内には、明治初年まで「銀峯山神宮寺」があった。

祭神は、住吉大神と神功皇后とされている。

現本殿は、江戸時代、寛文十二年(一六七二)の再建で、左右二殿より成る。各一間社春日造、檜皮葺、両殿前面を板壁などで連ね、一つづきの建物のようになつている。春日造社殿をつなぐ他の例に比べて、当本殿の場合、縁廻りなど一体感の強い構成となり、連棟社殿形式の展開を示す遺構として、その資料的価値は高い。県内における十七世紀の特異な形式の神社本殿として重要である。

西吉野村教育委員会

 

地図

奈良県五條市西吉野町夜中

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