社号 | 鴨神社 |
読み | かも |
通称 | |
旧呼称 | |
鎮座地 | 大阪府高槻市赤大路町 |
旧国郡 | 摂津国島上郡赤大路村 |
御祭神 | 大山積命 |
社格 | 式内社、旧村社 |
例祭 | 4月29日 |
式内社
鴨神社の概要
大阪府高槻市赤大路町に鎮座する神社です。三島江地区に鎮座する「三島鴨神社」と共に式内社「三嶋鴨神社」の論社となっています。
式内社「三嶋鴨神社」に関連して、『伊予国風土記』逸文に次のような記述があります。
『伊予国風土記』逸文(大意)
乎知郡(越智郡)の御嶋に鎮座する神の名は「大山積神」で、「和多志の大神」とも言う。この神は仁徳天皇の御代に顕れ、百済の国より渡ってきて摂津国の「御嶋」に鎮座した。御嶋というのは摂津国の御嶋の名である。
伊予国越智郡(現在の愛媛県今治市付近)の御嶋(大三島)に鎮座する伊予国一宮「大山祇神社」について述べたもので、この神は百済から摂津国の「御嶋」に渡ってきて鎮座したことが記されています。そして伊予の御嶋はこれに因むとし、摂津国から遷ってきたことが示唆されています。
そして百済から渡ってきて摂津国の「御嶋」に鎮座した「大山積神」とは式内社「三嶋鴨神社」のことであると考えられています。
式内社「三嶋鴨神社」の論社は先述の通り当社と三島江地区の「三島鴨神社」の二社があります。『延喜式』神名帳には島下郡とありますが二社とも旧・島上郡に鎮座しています。
とはいえ当社は旧・島下郡との境界スレスレに鎮座しており、かつて島下郡だったとしてもおかしくありません(江戸時代に島上郡に編入されたとする説あり)。また、鎮座地の小字を「鴨林(かんばやし)」と呼ぶことも当社が論社である説を強化しています。
一方で三島江地区の「三島鴨神社」はかつて淀川の中州にあったと伝えられ、その中州を神の力によって作られた「御島」と讃え、これが「三島」となったとしています。三島江地区の三島鴨神社はかつて「幾島大明神」と呼ばれたことからも、淀川に形成された幾つもの島々を神聖視し祀ったことを思わせます。また、『伊予国風土記』逸文に「和多志の大神」とあるのも、淀川の「渡し」の神だった可能性が考えられ、これらが三島江地区の三島鴨神社が式内社である説を補強しています。
このように両社共に式内社であることに説得力があり、いずれとも決め難いのが現状です。
当社の御祭神は「大山積命」であり、「伊弉諾尊」「伊弉冉尊」「鴨御祖大神」を配祀しています。「大山積命」は『伊予国風土記』逸文に記されている通りですが、一方で賀茂氏の神として「鴨御祖大神」を祀っています。先述の通り当社の鎮座地の小字を「鴨林(かんばやし)」といい、当地に賀茂氏が居住し祖神を祀ったことが考えられます。
ただ、「鴨御祖大神」は山城系の賀茂氏(賀茂別雷神社、賀茂御祖神社などを奉斎する)の祖神である賀茂建角身命を指すと思われます。
一方で当社の周辺を見ると「三島溝橛耳神」を祀る式内社の「溝咋神社」が茨木市五十鈴町に鎮座しています。三島溝橛耳神は事代主命の義父にあたり、事代主命は葛城を拠点とした地祇系賀茂氏(「高鴨神社」「鴨都波神社」などを奉斎する)の祖神です。
このことから当地に居住した賀茂氏は山城を拠点とした天神系でなく葛城を拠点とした地祇系だった可能性が高いと考えられ、当社に事代主命が祀られていたことも考えられます。
また、静岡県三島市大宮町に鎮座する伊豆国一宮「三嶋大社」も大山祇命と共に事代主命が祀られており、「三島」と「葛城系賀茂氏」との関連性が指摘されています。
ただ、『延喜式』神名帳には「三嶋鴨神社」について二座とは記されていないので、大山積命と事代主命のどちらか一柱しか祀られていなかったことと思われます。「三嶋=御嶋」を重視するなら淀川の中州に鎮座していた三島江の三島鴨神社、「鴨」を重視するなら鴨林の小字のある当社が有力となりましょう。
このように式内社「三嶋鴨神社」は「三嶋」要素と「鴨」要素が複雑に絡み合い比定の難しい神社となっています。
境内の様子
当社の鳥居は境内の南方50mほどの地に南向きに建っており、鳥居の前には提灯を吊るための大きな提灯台があります。そこから住宅に挟まれた狭い隙間に参道が伸びています。
参道を進んでいくと注連柱があり、ここが境内入口となります。
注連柱を通過した様子。宅地に囲まれながらも境内は鬱蒼としています。
参道の右側(東側)に手水舎があります。
正面に南向きの社殿が並んでいます。拝殿はRC造で瓦葺・平入入母屋造。
拝殿前の狛犬は花崗岩製で彫りの深いもの。
拝殿後方にはRC造の銅板葺流造の本殿が建っています。2019年現在、銅板の屋根は緑に塗られていますが、以前は赤に塗られていました。
社殿前の左側(西側)に境内社の「白玉稲荷大明神」が東向きに鎮座しています。
白玉稲荷大明神の前方にある火を焚くための区画(?)に竹が神籬状に組み立てられていました。
当社の祭祀で用いるものなのでしょうか。
また、境内は宅地に囲まれた狭い空間ながら、このように立派な巨樹も聳えています。
当地の小字を「鴨林(かんばやし)」といい、文字通り古くからカモの神を祀る森林だったのでしょう。
由緒
案内板
神社明細書
地図
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