社号 | 姫皇子命神社 |
読み | ひめみこのみこと |
通称 | |
旧呼称 | 鎮守 等 |
鎮座地 | 奈良県磯城郡田原本町多 |
旧国郡 | 大和国十市郡多村 |
御祭神 | 姫皇子命 |
社格 | 式内社、旧村社、「多坐彌志理都比古神社」境外摂社 |
例祭 | 10月12日 |
姫皇子命神社の概要
奈良県磯城郡田原本町多に鎮座する式内社です。
当社の創建・由緒は不詳ですが、古くから同じ多地区に鎮座する「多坐彌志理都比古神社」と非常に関係が深く、同社の境外摂社となっています。『延喜式』神名帳の註に「大社皇子神」とあり、これは多社(=多坐彌志理都比古神社)の御子神を祀るものと考えられます。
また同じ多地区に鎮座する「皇子神命神社」と対になる神社であると考えられます。
久安五年(1149年)に「多坐彌志理都比古神社」の禰宜が国司に提出した『多神宮注進状』によれば、当社は「皇子神命神社」「小杜神社」「屋就神命神社」と共に「多坐彌志理都比古神社」の若宮となっていることが記されています。
同書によれば当社の神は「天媛日火孁神尊」であり、同書の裏書にはこの神は「天疎向津少女命」、つまり天照大日孁尊の分身であるために「姫皇子」といい、同神の若魂であるために「天疎」という、とあります。またこの神は高宮郷座天照大神和魂神社と同体で、これは『延喜式』神名帳の河内国讃良郡の高座神社である、とも記しています。
ここで不審なのは、『延喜式』神名帳の河内国讃良郡には「高座神社」或いは「高宮郷座天照大神和魂神社」なる神社が記載されていないことです。
同書の「樹森神社」(式内社「小社神命神社」 / 現在の「小杜神社」)の記事に“私考”として「高宮はまさに高座に作る」云々とあるため、或いは「高宮神社」(大阪府寝屋川市高宮に鎮座)を指しているのかもしれません。
また一般にアマサカルムカツヒメといえばアマテラスの荒魂であり、兵庫県西宮市大社町に鎮座する「廣田神社」の御祭神として知られていますが、ここでは荒魂でなく和魂であるようです。
なお、『多神宮注進状』には対となる「皇子神命神社」の神は「皇孫日火霊神尊」であり「瓊瓊杵尊」と同体であると記されています。
しかし何故「多坐彌志理都比古神社」の若宮にニニギとアマテラスの和魂が祀られているのかははっきりしません。
同書によれば「多坐彌志理都比古神社」の祭神は「天忍穂耳尊」と「天疎向津媛命」であるといい、後者に関しては当社の祭神と被ってる点が猶更のことよくわかりません。
多氏の奉斎した「多坐彌志理都比古神社」に多氏と無関係のアメノオシホミミとアマサカルムカツヒメ(アマテラスの荒魂)を祀るのは諸説ありますが、皇室の守護神として祀ったものとも考えられ、そしてその御子神を祀ったのが「皇子神命神社」とも考えられます。
そうであるならば、「皇子神命神社」の対となる当社の祭神はアマサカルムカツヒメでなくニニギの母たるタクハタチヂヒメではないかとする説もあります。
一方、室町時代の文書『和州五郡神社神名帳大略注解』(通称『五郡神社記』)によれば、「多坐彌志理都比古神社」に祀られる四座の内、右の二坐が「彦皇子神命」「姫皇子命」であり、若宮と称するとあります。
つまり同書によれば当社および「皇子神命神社」は「多坐彌志理都比古神社」に合祀されていたことになります。
しかし『延喜式』神名帳に「多坐彌志理都比古神社」とは別に記載されていること、また『多神宮注進状』にも同社に合祀されていることは見えないことから、少なくとも別々に祀られていたのが本来の形態だったものと思われます。
現在は当社および「皇子神命神社」は両社とも「多坐彌志理都比古神社」の境内から離れた地に祀られています。
一度「多坐彌志理都比古神社」に合祀された後に元に戻されたのか、それとも『五郡神社記』の記述が誤りなのか、はっきりしません。
いずれにしてもかなり古くから(或いは創建当初から?)「多坐彌志理都比古神社」と関わりの深い神社であるのは間違いありません。
境内の様子
当社は「多坐彌志理都比古神社」の東方約200mほどのところに鎮座しています。
多地区の集落の北西にあたり、玉垣で囲われた境内の東側に鳥居が東向きに建ち、ここが入口となっています。
鳥居手前の左側(南側)に手水舎が建っています。
鳥居をくぐると正面奥に社殿が東向きに並んでいます。
拝殿は本瓦葺の平入切妻造に妻入切妻屋根の向拝の付いたもの。
境内には樹木がほぼなく、社殿傍らに木が聳えているものの枯れてしまったのか幹が切断されてしまっています。
拝殿前に配置されている狛犬。花崗岩製です。
拝殿後方、塀に囲まれて銅板葺・一間社春日造の本殿が建っています。
由緒
案内板
田原本歴史遺産 神々を訪ねて
延喜式内社 旧 城下郡 多 姫皇子命神社
地図
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