社号 | 天照大神高座神社 |
読み | あまてらすおおかみたかくら |
通称 | |
旧呼称 | 春日戸神社、弁才天 等 |
鎮座地 | 大阪府八尾市教興寺 |
旧国郡 | 河内国高安郡教興寺村 |
御祭神 | 天照大神 |
社格 | 式内社、旧村社 |
例祭 | 7月第一日曜日 |
天照大神高座神社の概要
大阪府八尾市教興寺に鎮座する式内社です。『延喜式』神名帳には大社とあり、また元の名を「春日戸神」としたことも記載されています。
式内社の多くは集落の近くに鎮座しているものの、当社は全く異なる様相となっています。
当社は生駒山地の南部、高安山の西麓に立地していますが、その鎮座地は狭い谷間の奥にある岩窟で、まさにえも言われぬ神の世界、俗界とは遠く離れた深山幽谷の趣があります。
都市近郊にこのような場所があるとは…と初めて訪れる方は驚かれるかもしれません。
社伝によれば、当社は元は伊勢の宇治山田に鎮座していたが雄略天皇二十三年(479年)に当地に遷座したとされています。
当社は社名に「天照大神」の名を戴く唯一の式内社であり、「高座」に鎮座することが社名に表れています。
本殿の建つ岩場を神の坐すべき「高座」と見立てたものでしょうか。河内国の式内社の中でも古い信仰の在り方を残す貴重な神社と言えるかもしれません。
また当社は先述のように「春日戸神」を元の名にしていることが『延喜式』神名帳に記されています。
春日戸とは恐らく特定の人々の集団と思われるものの、『新撰姓氏録』等の資料に見えず詳細は不明です。
この春日戸が元々当社を奉斎したのでしょうか。それとも別々の神社が統合されて二座になったのか、どのような経緯があったのかも全く不明です。
江戸時代には「弁財天」を祀る神仏混淆の神社として崇敬が厚かったようで、空海が当社へ参籠した際に神託によって祀られたと伝えられています。
明治の神仏分離により現在は「岩戸神社」において弁財天と同格の神道の神である「市杵島姫命」を祀っています。
当社の「異界」的な雰囲気は写真ではなかなかわかりづらいかもしれません。
大阪で神社を巡られるなら、是非当社を実際に訪れて、雰囲気を存分に味わいながら参拝してみてください。
境内の様子
境内入口。北西向きに一の鳥居が立ち、森の中に先の見えない参道が続いています。
ひたすら谷筋の森を奥へ奥へと進んでいきます。
しばらく進んでいくと玉垣と石垣が見えてきます。石垣は苔むしており美しい光景です。
石垣の先で参道が二手に分かれており、それぞれに鳥居が建っています。
左上が現在末社となっている「岩戸神社」(後述)で、まっすぐ進むと本社である「天照大神高座神社」です。
まっすぐ進んで「天照大神高座神社」へ。二の鳥居である神明鳥居が北向きに建ち、そこから石段が続き、その上に社殿があります。
なお手前右側の社号標は文政元年の銘があり、珍しく江戸時代に建てられたもののようです。(或いは別の石造物の転用か?)
二の鳥居の左側(北側)に手水舎があります。手水鉢は正徳五年(1715年)に奉納されたもの。
二の鳥居の左右に狛犬が配置されています。
二の鳥居をくぐり石段の上へ。
石段の上の空間に社殿が南西向きに建っています。
拝殿は天照大神が祀られてることを意識してか、神明造に似た反りの無い屋根の平入切妻造(銅板葺)となっています。
拝殿後方の岩盤の上に本殿のような銅板葺・入母屋造の建築があり、恐らくこれは幣殿です。
確認できないものの、本殿はこの後方にある岩窟内に納められてるようです。
これは古い祭祀形態を残す磐座の一種と思われ、この岩窟こそが神の坐す「高座」ということでしょう。
奥部から本社社殿全体を眺めた様子。岩盤の小高いところに幣殿のあることがわかります。
社殿の建つ空間の周縁には、稲荷系の神社でよく見られるような「お塚」が祀られています。北斗七星や山神等も祀られてるようです。
シンプルに祀られることの多い天照大神の神社でこれほど多彩な信仰の見られるところは比較的珍しいと思われます。
石段下へ戻ります。
鳥居の左側に懸造のような二階建ての建築があり、下部に「白龍大神」が祀られています。祠の前は井戸になっており、下の穴から神水をいただくことができます。
なお、この建築の二階部分が如何なる用途の建物なのかは不明。
二の鳥居の右側(南側)の空間にはこのような滝行場があります。
この滝は「白飯之滝」と呼ばれており、旱魃でも水が涸れることはないと伝えられています。
生駒山地の麓や中腹に鎮座する神社はしばしば滝行場がありますが、当社では多数の「お塚」や不動明王像などが置かれ、特に密教色の濃い空間となっています。
岩戸神社
続いて境内左側(北側)の「岩戸神社」へ。参道を戻って途中の分岐の左側にある石段を上ります。
この上に鳥居が北向きに建っています。
鳥居をくぐると左側(北側)に立派な手水舎があり、独立した神社というような趣があります。
さらに奥の石段を進んでいくと「岩戸神社」の社殿が北向きに建っています。
社殿(拝殿?)は銅板葺の平入入母屋造で、仏堂のような雰囲気もあります。
本殿は確認できませんがこちらも岩窟に祀られてるのでしょうか。
岩戸神社から望む境内。当社の構造が複雑で立体的なことがわかります。
私が参拝した際、他の参拝客から「一体どこから参拝したら良いのか…」と言われたほどです。
神社を後にし、付近の道路から西側を見ると大阪平野を見渡すことができます。
谷間の鬱蒼とした境内とはまるで別世界。参拝を終えて戻ってきた際は「神の世界から人の世界へと戻ってきたんだな」などとつい感じてしまいます。
御朱印
由緒
石碑
岩戸神社
『河内名所図会』
地図