社号 | 高売布神社 |
読み | たかめふ |
通称 | |
旧呼称 | 荷月大明神、槻の宮、斎の宮、惣社明神 など |
鎮座地 | 兵庫県三田市酒井 |
旧国郡 | 摂津国川辺郡酒井村 |
御祭神 | 下照姫命 |
社格 | 式内社、旧郷社 |
例祭 | 10月9日 |
式内社
高売布神社の概要
兵庫県三田市酒井に鎮座する式内社です。
当社の創建・由緒は詳らかでありません。一説に推古天皇の御代に創建されたとも伝えられています。
同じ摂津国川辺郡の式内社「売布神社」との関係性も考えられますが詳細は不明です。
近世には「荷月(いつき)大明神」「槻の宮」「斎(いつき)の宮」などと呼ばれ、京都の臨済宗系の寺院である西山宝鏡寺より寄進された「正一位荷月大明神」と刻まれた扁額が伝わっています。
社伝によれば当地付近は平安時代中期には多田源氏の荘園となり、源満仲が当社を当地の総社としてケヤキ(槻=ツキ)の木を植えたと伝えられています。当社の旧社名もこの故事に因んでいます。
現在の御祭神は「下照姫命」です。どのような由緒で下照姫命が祀られているのか詳らかでありません。また、当社が式内社「高売布神社」は早くに所在不明となっており、当社に比定された根拠も不明です。
このように当社に伝わる伝承が少なく不明な部分が多いですが、本殿は永正十年(1513年)に建立された貴重な一間社流造の建築で、国指定重要文化財となっています。
また、当社に伝わる木造狛犬はカヤの一木造で永仁五年(1297年)の墨書があり、こちらも貴重な作品として国指定重要文化財です。
平野部から離れた山深い地でありながら貴重な文化財の多く伝わる神社であると言えます。
境内の様子
当社の境内と入口。羽束川の形成する南北に細長い谷沿いに、大船山と向かい合うような立地に鎮座しています。
鳥居は境内の東側に東向きに建ち、鳥居の正面には杉の木が7本ほど横並びに聳えています。
鳥居の右側(北側)に手水舎があります。
鳥居と手水舎の間に「高賣布社」と刻まれた石碑が建っています。
これは江戸時代中期の地理学者である並河誠所が当時所在不明となっていた式内社を研究し、比定された式内社に記念として建立されたもの。
摂津国の式内社ではよく見かけるものです。
鳥居をくぐり石段を上ると正面に東向きの社殿が並んでいます。
拝殿は銅板葺・平入入母屋造に千鳥破風と軒唐破風の付いた真新しい建築。
建替え前の拝殿は厚い入母屋屋根で、さながら歌舞伎舞台のような、この地域の特徴をよく表す開放的な拝殿だったようです。
拝殿の後方に幣殿が続き、石垣の上は本殿の建つ空間となっています。
本殿は檜皮葺の一間社流造。永正十年(1513年)に建立された極めて貴重な建築で、国指定重要文化財となっています。
摂津や播磨で多くの建築を残した藤原光吉・宗次を棟梁として建立されたもので、均整の取れた非常に美しい神社建築と言えます。
本殿両脇に配置されている狛犬。古いものらしく苔むして石材は不明。
しかし角柱状の顔、笑うような口、太く長い前足、その割に細い胴体と非常に特徴的でユーモラスな顔つきと体つきをしており、一目見ると忘れられない狛犬です。狛犬マニアの間でも有名な狛犬のようです。
この狛犬とは別に当社は永仁五年(1297年)の墨書のある木造狛犬を伝えており、そちらは国指定重要文化財となっています。
本社拝殿の右側(北側)に基壇があり、この上に境内社が鎮座しています。
この基壇上の鳥居をくぐって正面に「戎神社」が鎮座しています。
戎神社の右側(北側)に隣接して「稲荷神社」の祠が鎮座。
本社拝殿の左側(南側)には神庫らしき建築があります。重厚な入母屋屋根で、この地域らしい建築と言えます。
当社入口から少し北へ歩くと、右側(東側)にちょっとした区画があり、鳥居が建てられその先に石が置かれています。
ここは御旅所でしょうか。丁度大船山が正面に見える場所に鳥居があり、遥拝所のようでもあります。
しかし当社と大船山に関する伝承は管見では確認できず、詳細不明です。
当社の前を流れる羽束川。当社はこの川が形成する谷に立地しており、山深い地であることがわかります。
元から山間部の能勢郡や有馬郡を除けば、摂津国でこのような山深い地に鎮座する式内社は珍しいと言えます。
由緒
案内板
高売布神社
『摂津名所図会』
地図