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上宮天満宮 (大阪府高槻市天神町)

社号上宮天満宮
読みじょうぐう/うえのみや
通称北山の天神さん 等
旧呼称
鎮座地大阪府高槻市天神町1丁目
旧国郡摂津国島上郡上田辺村
御祭神菅原道真命、武日照命、野見宿禰命
社格旧郷社
例祭2月25日、26日

 

上宮天満宮の概要

大阪府高槻市天神町1丁目に鎮座しています。

当社は「日神山(ひるがみやま)」と呼ばれる丘の上に鎮座しており、元々は後述の式内社「野身神社」が鎮座しており、土師氏の祖神を祀っていたと伝えられています。また『倭名類聚抄』に記載されている摂津国島上郡の「濃味郷」は当地付近と考えられています。

社伝によれば、正暦四年(993年)に太宰府に左遷されて憤死し怨霊と化した菅原道真を慰めるために正一位左大臣を賜う詔を出し、その勅使として菅原為理が太宰府へ赴いて御霊代などを奉じたその帰途、当地の領主の館に宿泊し、いざ出立しようとした際に輿が動かず、これは道真の霊の先祖と共に留まりたいとする意向だとして社殿を建立したのが当社の創建だと伝えられています。

菅原道真をはじめとする菅原氏は土師氏から出た氏族であり、この地に鎮座していた野身神社が土師氏の祖神を祀る神社であった縁で、当時怨霊として猛威を振るっていた菅原道真が当地に祀られたことが窺えます。(同様に土師氏ゆかりの地に菅原道真公が祀られて天満宮とされた例に大阪府藤井寺市の「道明寺天満宮」、奈良県奈良市の「菅原天満宮」などがある)

現在の御祭神は「菅原道真命」を主祭神とし「武日照命」「野見宿禰命」を配祀しています。野見宿禰命は元々は野身神社の御祭神で土師氏の祖神あり、武日照命は野見宿禰命の子です。

社伝では配祀の二柱は天満宮創建の際に祀られたとしていますが、この二柱は明治年間に新たに祀ったとする情報もあって錯綜しています。いずれにせよ現在は、境内社となっている野身神社に祀られている野見宿禰命とは別に本社に野見宿禰命が祀られていることになります。

なお、当社では「全国二番目に創建された天満宮」とも言われていますが、最初に創建された天満宮である太宰府天満宮が延喜十九年(919年)、北野天満宮が天暦元年(947年)の創建なのに対し、当社の天満宮としての創建は上述の通り正暦四年(993年)であり、「全国二番目」は妥当ではありません。

しかし野身神社を当社の前身と捉えれば、当地の祭祀の歴史は極めて古いことが推測されます。

現在は高槻市における中心的な神社として多くの人々の崇敬を集めています。

 

野身神社

上宮天満宮の境内社。式内社であり、元々当地は当社が鎮座していたと伝えられています。御祭神は「野見宿禰命」。

当地に土師氏が居住し祖神を祀ったのが当社だと考えられています。『新撰姓氏録』には多くの土師氏関係の氏族が登載されており、摂津国神別では天穂日命の十二世孫、飯入根命の後裔であるという「土師連」が登載され、この氏族が当社を奉斎していたと思われます。

土師氏は古来より土器の生産および葬送儀礼に携わった氏族で、特に古墳時代においては埴輪等の土器の生産および古墳の祭祀を担っていたと考えられます。

他地域を見ると大阪府の古市古墳群には河内国志紀郡土師郷があり、彼らの子孫が創建した「土師神社」の後身「道明寺天満宮」(大阪府藤井寺市道明寺に鎮座)が鎮座しています。他方、百舌鳥古墳群には「毛受腹」と呼ばれる土師氏の一族がいたことが知られています。また、奈良県の佐紀盾列古墳群には土師氏の一族である菅原氏の拠点である菅原(菅原氏の奉斎した「菅原天満宮」が鎮座)、及び同じく土師氏の一族である秋篠氏の拠点である秋篠があります。

このように5世紀頃に畿内で築造された巨大古墳群の周りには土師氏の存在がありました。そしてこれは当地でも同じです。

当地の場合は継体天皇陵と考えられている「今城塚古墳」や「太田茶臼山古墳」、さらに上宮天満宮のすぐ近くには「昼神車塚古墳」など大規模な古墳があり、「三島野古墳群」と呼ばれています。

これらの古墳は当地から3km強ほど西方にある埴輪製作遺跡「新池遺跡」で製作された埴輪が用いられました。これらの土器を製造していた人々は『日本書紀』欽明天皇二十三年(562年)十一月条に見える新羅人「摂津国三嶋郡埴廬」だと考えられていますが、彼らを束ねていたのは土師氏であった可能性があります。

当地の土師氏は新池遺跡で埴輪を製作し、今城塚古墳はじめ三島野古墳群の葬送を担当していたことが考えられ、古墳時代における大王の権力構造において極めて重要な地位にあったことが推測されます。

 

境内の様子

JR高槻駅の北口から北方を眺めた様子。当社の一の鳥居が見え、その奥に当社の鎮座する丘「日神山(ひるがみやま)」があります。

 

一の鳥居は境内の100mほど南方の道路上に南向きに建っています。

 

境内入口。当社は丘の上に鎮座するため石段が続いており、脚の悪い人々のために石段下に拝所が設けられています。

 

石段を上ると二の鳥居が南向きに建っています。

 

二の鳥居からさらに参道を進むと釘貫門が二つ連結したような変わった形の門があります。

 

門をくぐった様子。丘の上は広く平らな空間になっています。日当たりが良く、この丘を日神山と呼ぶのは元々は太陽神の祭祀場だったからかもしれません。

 

参道の途中、右側(東側)に手水舎があります。

 

正面の石段上に南向きの社殿が並んでいます。

拝殿は瓦葺・平入入母屋造の割拝殿。正面五間・奥行二間の大規模な建築です。明暦二年(1656年)の建築。

なお江戸時代の地誌『摂津名所図会』の挿絵では割拝殿でない普通の拝殿として描かれています。いつの頃か改造されたのかもしれません。

 

拝殿後方、石段上に本殿と妻入切妻造の拝所が建っています。

本殿は神明造ですが、屋根を竹で葺いているのをはじめ、柱や壁なども竹を建材としており非常に珍しいものです。平成八年(1996年)に放火により天正十八年(1590年)築とされる本殿が焼失したため、平成十四年(2002年)に再建されたのが現在の建築です。

案内板

竹の本殿

 

本殿前の狛犬は砂岩製。宝暦九年(1759年)に奉納されたもので、近隣の芥川の石工、西田新九郎正義によって作られたものです。カッと目を見開いた特徴的な顔つき。

案内板

上宮型狛犬

 

本殿前の右側(東側)には天満宮らしく牛の石像が配置されています。真新しい花崗岩製。

 

本殿の左奥(北西)に四社の境内社が南向きに一つの覆屋に納められています。祀られているのは左から順に次の通り。

  • 日吉社
  • 金比羅社
  • 稲荷社
  • 荒神社

 

四社の境内社の右側(東側)、本殿の真後ろ(北側)に「守護天神」が南向きに鎮座。

ペットとして飼われるなど人間と関わってきた小動物の霊を祀る神社のようです。

 

本社本殿の右側(東側)に梅林があり、その入口に「春日社」が南向きに鎮座。

 

春日社の右奥(北東)に涸れた池があり、その中央の島に「厳島神社」が南向きに鎮座。池には植木鉢が配置され、水が導入されることはなさそうです。

 

本社拝殿の右側(東側)に「皇大神社」が北向きに鎮座。

 

本社拝殿の手前左側(西側)に絵馬堂があり、内部には非常に数多くの絵馬が掲げられています。

 

絵馬堂の右側(北側)には神輿庫があります。

 

本社拝殿前の右側(東側)には「神楽所」「御霊屋」と書かれた建物があります。

具体的な用途はよくわかりませんが、宝形造の建築であり、元々は仏堂だったものと思われます。明治の廃仏毀釈により転用されたものでしょうか。

 

野身神社

参道の釘貫門(?)の右側(東側)に式内社の「野身神社」が北向きに鎮座しています。御祭神は「野見宿禰命」。詳細は概要をご参照ください。

拝所の後方、塀に囲われた内側に瓦葺の流造風の社殿が建っています。この社殿の建つ地は「宿祢塚古墳」と呼ばれる古墳で、野見宿禰の墓であると伝えられています。

案内板

野身神社と宿祢塚古墳

 

昼神車塚古墳

当社境内入口から東へ少し進んだところに「昼神車塚古墳」があります。墳丘長56mで、六世紀前半~中葉に築かれた前方後円墳です。

三島野古墳群の中でも最後に築かれた古墳で、太田茶臼山古墳、今城塚古墳から続く当地における大王・首長の系譜や情勢を考える上でも非常に重要な古墳です。野身神社の祭祀にも関わりがあったのかもしれません。

なお、伝承では菅原道真公が車を埋めたと伝えられています。

案内板

昼神車塚古墳

 

タマ姫
元々ここは式内社があったんだ!古くから神様が祀られたところなんだね!
土師氏がここに居住して祖神を祀ったと考えられているわ。その後に土師氏の子孫である菅原道真が祀られて天満宮となったのは縁を感じるわね。
トヨ姫

 

由緒

案内板

上田辺町と天神さん

『摂津名所図会』

 

地図

大阪府高槻市天神町1丁目

 

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