社号 | 生國魂神社 |
読み | いくくにたま |
通称 | 生玉さん、難波大社 等 |
旧呼称 | |
鎮座地 | 大阪府大阪市天王寺区生玉町 |
旧国郡 | 摂津国西成郡西高津村 |
御祭神 | 生島大神、足島大神 |
社格 | 式内社、旧官幣大社、別表神社 |
例祭 | 9月9日 |
生國魂神社の概要
大阪市天王寺区生玉町に鎮座する式内社です。名神大社に列せられ、古くから極めて重要な神社でした。また『住吉大社神代記』(住吉大社に伝わる古典籍)に「子神」として「難破生國魂神」が記載されてあり、古くは住吉大社とも関係が深かったようです。
御祭神の「生島神」「足島神」は日本神話に見えない神ですが、『古語拾遺』には「生島 これ大八洲の霊、今は生島巫の奉斎する所なり」とあり、漠然ながら日本の国土の神であると考えられ、生島巫という専門の巫によって祀られていたようです。『延喜式』神名帳では宮中神としても祀られたことが記載されています。
平安時代から鎌倉時代にかけて、天皇即位儀礼の一つとして「八十島祭」というのが難波津で行われました。これは海辺の祭壇で天皇の衣の入った箱を揺り動かすといった神事だったようです。この神事については詳細の不明な部分も多いのですが、生島巫が奉仕するのが例だったことから当社の祭神が主神であったとするのが有力です。生島神・足島神は国土の神であるため、天皇の衣を揺り動かすことで国土神の霊威を付着させ、天皇の権威の拠所としたとも言われています。
本来、当社は上町台地の先端上、すなわち現在の大阪城のある辺りに鎮座していました。古くは河内湖と大阪湾を結ぶ海峡を控えた地であり、浪速において最も重要な地と言っても過言ではありません。いつから祀られたのかは定かではありませんが、『日本書紀』に孝徳天皇が当社の木を伐ったことが記されており、少なくともそれ以前からその地に鎮座していたことが窺えます。しかし時代は下って豊臣秀吉がその地に大阪城を築くにあたり、当社は本来の社地からかなり南側となる現在地に遷座となりました。
古くは国土の神として、天皇の権威付けにも関わる極めて重要な神事を担った国家的性質の強い神社でしたが、現在地に遷った江戸時代以降は庶民信仰の神社に様変わりし、特に大坂の町民に崇敬され「生玉さん」と親しまれるようになりました。現在も大阪の人々の崇敬厚く、住吉大社と並ぶ大阪を代表する神社として参拝客の絶えない神社となっています。
境内の様子
当社の参道は谷町筋から西へ伸びています。
境内入口。左右に大きな燈籠を配置し鳥居がドドンと構えています。
鳥居脇で参拝客を見守る狛犬。銅像となっています。
鳥居からやや折れ曲がって東向きの社殿が建っています。明治以降、火事や空襲、台風など数々の災害に見舞われ、現在は頑丈なコンクリート造となっています。
本殿は流造を基調に千鳥破風、唐破風、千鳥破風の三つの破風が並ぶ「生國魂造」という独特の形式になってるのですが、残念ながらよく見えません。こちらもやはりコンクリート造になっています。
社殿の右側(北側)に多くの境内社が鎮座しています。こちらは「天満宮」で御祭神は「菅原道眞公」。和算の絵馬が奉納されています。
こちらは「住吉神社」。御祭神は「底筒男神」「中筒男神」「表筒男神」。小さな祠ながら住吉造となっています。
こちらは「皇大神宮」。「天照皇大御神」を祀っています。
社殿北側、一段低くなっている空間の池に「精鎮社」が鎮座しています。御祭神は「事代主神(えびす)」「比咩大神(べんてん)」。かつて表参道の蓮池に祀られていた弁財天社で、鮮魚を取り扱う商人や釣り人の信仰が厚いようです。
こちらは「稲荷神社」。「倉稲御魂神」を祀っています。佐賀県の祐徳稲荷の分霊で、鍋島藩とその蔵屋敷に出入りした商人に崇敬されたようです。
稲荷神社の右隣に「源九郎稲荷神社」が鎮座。「源九郎稲荷大明神」「八兵衛大明神」を祀っています。案内板には奈良県吉野の源九郎稲荷の御分祀とありますが、源九郎稲荷といえば大和郡山なので誤記かもしれません。八兵衛大明神は道頓堀中座の劇場に祀られていたといい、歌舞伎役者や松竹新喜劇の方々の崇敬が厚かったようです。
鴫野神社
「巳(みい)さん」とも呼ばれています。御祭神は「一寸島比賣神」「大宮賣神」「淀姫神」。かつて大阪城東側に「鴫野の弁天さん」として祀られ、淀君が殊に厚く崇敬したといわれています。縁結び・縁切りに験があり、「心」の字と錠の絵が描かれた提灯・絵馬が奉納されています。
城方向八幡宮
城方向でキタムキと読みます。御祭神は「譽田別命」「氣長足媛命」「玉依比賣命」。大阪城鬼門の守護神として祀られたといわれています。
鞴神社
御祭神は「天目一箇神」「石凝杼売神」「香具土神」。製鉄、製鋼、鋳金、機械工具を商う金物業界の守護神として崇敬を集めているようです。
家造祖神社
御祭神は「手置帆負神」「彦狭知神」。家造りの祖神で土木建築の守護神とされています。
浄瑠璃神社
近松門左衛門はじめ文楽の先賢を祀っています。文楽の守護神としてのみならず、広く諸芸の神としても崇敬されているようです。
案内板「浄瑠璃神社」
社殿北側の空間は広々とした公園のようになっており、参拝者の憩いの場となっています。都会の中のオアシスといったところでしょう。
当社の北側の出入口は天王寺七坂の一つ「真言坂」があります。天王寺七坂とは上町台地西側にある著名な七つの坂のこと。真言坂は天王寺七坂で最も北にあり、かつ唯一南北方向の坂となっています。
当社はかつて上町台地の先端、大阪城のあるところに鎮座していたといわれています。言うまでもなく古くからの要衝にあたり、朝廷や時の権力者が一目置いた場所です。現在地に遷座してもなお庶民の崇敬を集め、まさに浪速の歴史と共に歩んできた神社と言えるでしょう。
御朱印
由緒
由緒書「難波大社 生國魂神社略誌」
『摂津名所図会』
地図
最寄り駅
大阪メトロ「谷町九丁目」駅
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